「ドイツの時代」に自信深めるブンデスリーガ関係者 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • Photo by Getty Images

 大会前のドイツが悲観論に包まれていたのには、ドイツ王者バイエルンのチャンピオンズリーグ(CL)敗退が大きく影響している。1年前のCLではバイエルン対ドルトムントというドイツ勢同士の決勝が実現し、「ドイツの時代」の到来が叫ばれた。昨季もドイツから出場した4クラブ全てがベスト16に進出。グアルディオラ監督を迎えて更なる戦力補強を行なったバイエルンも前人未到の欧州2連覇へ順調に歩みを進めていた。

 しかし、準決勝でレアル・マドリードに2戦合計0-5で敗戦。「あのバイエルンが負けるなんて......」と、国内リーグを記録的な強さで制したバイエルンの完敗はドイツ国民にショックを与えるのには十分だった。ハノーファーのキント会長からは「我々はドイツサッカーを過大評価していたのかもしれない」という発言も飛び出した。

 不安の矛先はレーブ代表監督のチーム作りに向かい、直前で主力選手に負傷が相次いだこともあって、W杯開幕を前にドイツサッカー界はすっかり自信を失ってしまっていた。

 それだけに、今回の優勝はドイツサッカー界が自信を取り戻す大きなきっかけになっただろう。ドイツ代表の強さは充実した国内リーグや育成に支えられている。今大会も登録23人のほぼ全員が国内クラブの育成組織で育ち、16名がブンデスリーガでプレイしている。

 欧州クラブシーンにおいてドイツが存在感を強める中で、ドイツサッカー関係者はどこか自信を持ち切れずにいたのかもしれない。しかし、今回の代表チームの優勝は彼らがやってきたことの正しさを証明してくれた。「ドイツの時代」はもうやってきているのかもしれない。

 前述のキント会長も、「我々のチーム全てを誇りに思うことができる。すばらしいW杯だった」と代表チームへの賛辞を送っている。この「我々」には、代表メンバー23人やコーチ陣のみならず、ドイツサッカーに携わったすべての人が含まれるのだろう。

 優勝祝賀セレモニーの最後には、チームを後方から支えたスタッフたちが紹介されたが、その人数の多さには驚かされた。もちろん、そのさらに後方にもドイツサッカーの発展を支えた人々は数多く存在している。セレモニーでステージに上がった選手たちは一様に「みんなが世界王者なんだ」と述べていた。それは単なる謙虚さによるものではなく、4度目の戴冠の本質なのかもしれない。

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