決勝ゴールが象徴したドイツサッカー界の勝利

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • Photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 左サイドのライン際を、タテに走りきったシュールレが、ふわりしたと浮き球を折り返す。それをニアサイドに走り込んだゲッツェが胸トラップ&左足ボレー。逆サイドのゴール隅に、ボールは鮮やかに吸い込まれていった。

決勝ゴールをあげたゲッツェ(中央)とシュールレ決勝ゴールをあげたゲッツェ(中央)とシュールレ 90年イタリア大会以来、24年ぶりの世界一。

 この間、ドイツのサッカーは、劇的に変化した。そしてこの決勝ゴールは、変化の象徴、変化の証と言うべきものになる。アルゼンチンに同点ゴールが生まれそうな気配がしなくなった残りの数分間、ドイツが歩んできた道のりについて、僕は思いを巡らすことになった。

 24年前、世界のサッカーは、いまより娯楽的でなかった。ひと言でいえば守備的。「引いて構えてカウンター」が一般的なスタイルだった。時代背景を言えば、アリゴ・サッキ率いるACミランがチャンピオンズカップ(現在のチャンピオンズリーグ)を連覇したのは88〜89、89〜90シーズンで、時代を攻撃的サッカーに導いた「プレッシングサッカー」は、イタリアW杯当時、まだ欧州全体に広がっていなかった。

 そこで演じたドイツのサッカーも堅守速攻。3-3-2-2的な3-5-2のスタイルから、ウイングバック(ウイングハーフ)の馬力と、群を抜く結束力で、確実に勝ち上がっていった。

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