ブラジルW杯決勝が名勝負になった要因は? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

"本気のメッシ"を止めることは、さしものドイツディフェンスにとっても簡単なことではなかった。ドイツが70%に迫るボールポゼッション率を記録しながら、落ち着いて攻撃に専念できなかったのは、メッシが常にカウンターの脅威をドイツに与えていたからだ。

ドイツ守備陣に脅威を与え続けたメッシ photo by Takahashi Manabuドイツ守備陣に脅威を与え続けたメッシ photo by Takahashi Manabu もちろん、止まっている時間も長く、試合終盤はスプリントの回数も減っていった。1試合を通して見れば、メッシのプレイはまだまだ褒められたものではない。

 それでも、メッシという"武器"がアルゼンチンとドイツとの間にある総合力の差を埋める役割を果たしたことは間違いない。準決勝の結果を見る限り、ドイツの一方的な試合になりかねないと思われた決勝が、これほど白熱したゲームになったのはメッシがいたからこそだった。

 とはいえ、今回のワールドカップ決勝がどれほど激しい打ち合いの好ゲームだったとしても、両チームの総合力から考えれば、ドイツの勝利は妥当な結果だったとも思っている。

 決勝でも時間の経過とともに、ドイツらしい縦に速い攻撃がサイドを中心に見られるようになり、アルゼンチンを次第に圧倒。アルゼンチンはデミチェリス、ガライの両センターバックを中心に粘り強く守ってはいたが、限界は確実に近づいていた。

 そして延長後半、途中出場のFWゲッツェがスーパーボレーを決めて、ついに勝負は決着。チームとしての戦術的な完成度、さらには交代選手を含めた選手の多彩さと層の厚さと、どれを取ってもドイツが一枚上手だったと言わざるをえない。

「7試合を通して、我々は全出場チームのなかで最高のパフォーマンスを示したと信じている」

 ドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督は試合後、そう語っていたが、それは決しておごりではないだろう。ドイツの戦いぶりは、間違いなく世界一の称号を得るにふさわしいものだった。

 今大会をドイツが制したことで06年ドイツ大会のイタリア、10年南アフリカ大会のスペインに続き、ヨーロッパ勢がワールドカップ3連覇。と同時に、南米開催のワールドカップでは史上初となるヨーロッパ勢の優勝となった。

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