残り2試合で閉幕。ブラジルW杯は成功したと言えるのか (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by AFLO

 今後は、工事予算が膨らむ可能性もあるこれらインフラ整備をこのまま続行するのかどうかも含め、ブラジル政府の判断に注目が集まる。だが、いずれにしても国民の負担はさらに重いものとなることは火を見るより明らかだと言えよう。

 結局、昨年のコンフェデレーションズカップを機に国内各地に広がった開催反対デモの問題の根っこは、そこにあった。「BRICs」のひとつとして、この10年間で急激な経済成長を遂げたブラジルは、名目GDP世界第7位(2013年)という経済大国になったにもかかわらず、相変わらず一部の権力者と裕福層だけが富を独占した状態が続いている。確かにバスの運賃値上げがキッカケではあったが、若手弁護士を中心とした中産階級層たちが当初繰り広げたW杯開催反対デモの最大の目的は、「富の分配」というブラジルが抱える国内問題の解決にあったのだ。

 今大会は、政府の妥協策とブラジル代表の活躍もあって、国民の抗議活動は減少傾向になったが、問題が何ひとつ解決されていないという現状を踏まえると、むしろ閉幕後にさらに大きな問題として表面化することが予想される。しかし、一度出来上がった社会構造を権力者自らが変えるとは到底思えず、今後もブラジル国民の闘争が続いて行くと見ていいだろう。

 もっとも、6年後に五輪を控える東京都民は、これを対岸の火事と見てばかりはいられないはずだ。過去には、長野五輪閉幕後に県民の税金負担が大きな問題となった経験もある。巨大ビジネスと化したスポーツの祭典は、人に夢を与えるばかりではないという現実も、我々は認識しておく必要があるかもしれない。


  

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