2014.07.10

アルゼンチン決勝進出。明暗分けたマスチェラーノの1プレイ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 まず布陣が、オランダらしい攻撃的なサッカーを仕掛ける態勢になっていなかった。オランダと言えば3FWの国。4-3-3あるいは中盤ダイヤモンド型3-4-3が定番だ。とりわけファン・ハールは、後者(中盤ダイヤモンド型3-4-3)をこよなく愛する監督として知られる。94〜95シーズン、その布陣を前面に押し立て、アヤックスを欧州一に導いた実績がある。

 当時、ファン・ハールを訪ねれば、「この3-4-3はあらゆる布陣の中で最もパスコースが多い」と言って、こちらのノートに、フィールドプレイヤー10人の選手間を結んだ線を描き、そこに発生した三角形の数を示してくれたものだ。グアルディオラのサッカーは、このファン・ハールの三角形の理論にアレンジを加えたものと言われるが、いずれにしても、ファン・ハールはかつて「攻撃的サッカー陣営」の真ん中に位置した人である。

 そんな過去を持つファン・ハールと今回のファン・ハールは、別人のように見える。前戦コスタリカ戦(0-0、PK戦勝ち)で使用した布陣は、中盤フラット型の3-4-3。攻撃的サッカーの範疇に収まる布陣ながら、パスコース(三角形)は「ダイヤモンド型」より少ない。

 そして、この日使用した3-3-2-2は、守備的とは言わないが、攻撃的サッカーがスタンダードになったいま見ると、守備的に見える布陣だ。かつてのファン・ハールを知る者には、目を疑いたくなるような布陣だ。

 駒不足。アタッカーに活きのいい若手がいない。その一方で、ロッベン、ファン・ペルシーというバロンドール級のFWを2人、同時に有している。

 こうした現オランダ代表の特殊性に、自身の立場も加わる。ファン・ハールには2002年日韓共催W杯の欧州予選で、オランダ代表を敗退させた過去があった。

 結果が欲しかったのだと思う。信念を崩してまで戦おうとした理由は。

 だがその3-3-2-2は、試合が始まり、両陣営が組み合った図を眺めると、アルゼンチンにプレッシャーを有効に掛けていないことが明白になった。プレイの環境に自由が多いのはアルゼンチン。前半はアルゼンチン優位の展開で推移した。