ブラジルの名将スコラーリはどこで失敗したのか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 あるいは、秩序と効率性を追い求めたイレブンはどこかで恐怖心を抱いたのかもしれない。攻撃的マインドのチームは、先制点を許したくらいでは精神的に落ち込まないものだ。2点目を失ったとしても、勇敢さを保てる。だがセレソンは守り勝ってきただけに、失点によって負ける恐怖に動揺したのではないか。

「あり得ない」

 多くの選手が惚けた表情を浮かべているときに、3,4,5点と立て続けの失点を繰り返している。ボランチのフェルナンジーニョが後ろからボールを突かれ、奪われ、失点したシーンは象徴的だろう。

 ただフットボールが人生と同じで紙一重だとするなら、それも結果論なのかもしれない。

「大敗は喫したが、我々は誇りを失わず、追いつこうとする姿勢を見せた。最低の試合をしたが、人生はそれでも続く。我々には土曜日に3位決定戦がある」

 フェリポンはそう言って会見を締めくくった。次の試合の準備をする。彼らしい飾らない表現は、切なくなるほどに真実だった。

  

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