オランダを4強に導いたのは「日本的」監督采配 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「ティム(・クルル)がPKを止めて勝つことができたが、もし1本も止められずに負けていたら、私のミスだと批判されていただろう。それがサッカーであり、それが監督という仕事に就くものの人生だ」

 だからといって、まったく勝算がなかったわけではない。ファンハール監督は言う。

「ティムは腕のリーチが長く、シュートを止めることについては(正GKの)シレッセンよりもうまい。準備はできていた」

 レギュラーGKよりも控えGKのほうがシュートストップがうまいとは、いかにもオランダらしい事情だが(要するにオランダのGKはパスをつなぐなど、足技が必要な条件として重視されているということだ)、PK戦を控えGKに任せられる明確な理由があったわけである。

 また、あくまで結果論ではあるが、異例の交代策はコスタリカに与える動揺も決して小さくなかった。ピント監督が「(クルルを)見たことはなかったが、恐らく(PKの)スペシャリストなのだろう」と話していたように、コスタリカの選手にとって「PK戦を前にあえて代えてくるほどのGK」という心理的プレッシャーになった可能性はある。

PK戦を制して勝利が決まった瞬間に走り出すオランダの選手たちPK戦を制して勝利が決まった瞬間に走り出すオランダの選手たち 果たして背番号23の控えGKがPK2本を止め、オランダが2大会連続となる準決勝進出の権利を手にした。

 しかし、指揮官の策士ぶりはこれだけにとどまらない。

 今大会はスペインを5-1で葬った初戦をはじめ、3バック(実質5バック)を主戦システムとして活用しているファンハール監督。この日も例外ではなかったが、前線に関してはそれまでの2トップから3トップ(実質5バックの3-4-3)へと変更を加えている。

 ファンハール監督は「(ボランチの)デヨングが(ケガで)プレイできないので、システムを変えることにした」と語り、こう続ける。

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