ドイツ対フランス。好カードはなぜ凡戦になったのか?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

「今日は両チームが守備的にうまく戦ったと思う。ゴールチャンスは多くなかったが、それもゲームプランの一部だった」

 少なからず暑さも影響しただろう。リオデジャネイロでの13時キックオフ。強い日差しがピッチの半分ほどを照らし、試合中に顔をゆがめ、喘ぐようにプレイする選手もいたほどだった。レーブ監督が続ける。

「質の高いストライカーのいるフランスにチャンスを与えたくなかった。我々は彼らをうまく封じることができた。それこそが今日のカギだった。そしてフランスもまた、我々に対して同じようにやってきた」

 確かに、この日のドイツはまったくと言っていいほど無理をしなかった。前半の早い時間(13分)にFKからDFフンメルスのゴールで先制したこともあるのだろうが、リスクを冒して人数をかける分厚い攻めは影をひそめ、限られた前線の選手だけで無難に攻める。そんな攻撃ばかりが目についた。

 試合をむやみに動かすことなく、フランスをおとなしくさせたまま、90分をやり過ごしてしまおう。ドイツにそんな狙いがあったことは、指揮官の言葉からもはっきりとうかがえる。ある意味、意図的に試合を退屈なものにしたことをレーブ監督自身が認めているわけである。

「最後はフランスが同点を狙って総攻撃をかけてきたが、(センターバックの)フンメルスとボアテング、それに(GKの)ノイヤーがすばらしい仕事をしてくれた」

 だが、してやったりとばかりに語るレーブ監督の言葉を額面どおり受け止めるには、この日のドイツはあまりにもおかしかった。

 DFラインを高く設定して守備態勢を整えようとするのだが、前線の動きが総じて鈍い。その結果、ボールの出どころを抑えられず、1本の長いパスで裏をつかれるシーンがしばしば見られた。

 加えて、イージーミスも目についた。攻撃の組み立て段階で、これだけミスの出るドイツも珍しい。フランスもおつきあいしてくれたおかげで致命傷を負うことはなかったが、どうにも締まりに欠ける試合になってしまった。

 これでドイツは4大会連続のベスト4進出。レーブ監督が「これはすばらしい結果だが、我々は次のステップに進まなくてはならない」と話すように、狙うはもちろん90年イタリア大会以来遠ざかっているワールドカップ制覇である。

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