無敵の精神力。ブラジル人選手が海外で活躍できる理由 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 これは無敵の精神力ではないだろうか。

「多くのブラジル人選手は順応性に優れているね。お金にうるさいし、文句はいろいろ言うんだけど、基本的には鷹揚(おうよう)で陽気で前向き。それは外国人選手が異国で成功するには必要な条件なんだよ」

 かつてマウロ・シルバ、ジャウミーニャ、ドナトらブラジル人選手を擁して一世を風靡したデポルティボ・ラコルーニャの強化関係者が説明していたことがある。クラブチームだけではなく、ブラジル人選手は各国の代表選手に選ばれている。今大会のクロアチアは帰化選手が二人、他にもスペイン、ポルトガルなど枚挙にいとまがない。日本も過去4回のW杯では、ブラジル人帰化選手がいた。

 適応力。

 それは言い換えれば、鈍感力と言えるかもしれない。一つのことに縛られず、こだわらず、大局を見て、歩みを進める。そう考えると、自分がちっちゃいことを気にする日本人だな、と思いがけず落ち込む。

 とは言え、自分が日本人であることからはどうあっても逃れられないし、逃れたいとも思わないのである。

 こんなことがあった。開幕戦から毎日のように移動を続けるフォトグラファーと二人、空港で荷物が出てくるのを疲労困憊で待っていた。そこに、偶然にも二人のスーツケースがことことと並んで出てきた。その様子が妙に愛らしくて、おかしさを覚え、筆者は少しだけ元気になった。それは“わびさび”の一種というか、とっても日本人的な感覚である。そこで微笑をこぼした自分に、筆者は安心するのだ。

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