無敵の精神力。ブラジル人選手が海外で活躍できる理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 こうなると、こちらは打つ手なし。

「日本はなんでも能率主義で退屈だ。もっと人と人の人情を大切に、だな」なんてぼやく人は、ブラジルに住めばいい。きっと天国気分が味わえるはずだ。なぜなら、ブラジル人は本質的に陽気で大らかで無垢。欧州では自分の非を認めない人が多いが、ブラジル人はとりあえず申し訳なさそうな顔もする。人情満載。ホテルのドアマンなんて甘やかな笑顔すら浮かべる。

 しかし、とにかく不便だ。

 おそらく、プロフェッショナリズムという感覚が欠落している。目の前に起こったことについて、どうにかしようとする思いは強い。ところが、無知であることを恥じ、できなかったことを学習し、スキルアップする、という発想がない。仕事を極める、というプロセスで悟りを開き、生きる意味を見つける、なんて彼らは笑い出すだろう。某テレビ局の人気番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』など、不思議に感じるに違いない。

 ブラジル人は日本人とは違った次元で生きている。仕事を生きる、という部分はない。人生を生きる、という感覚が滅法強く、思い通りにならないのが人生さ、くらいに開き直り、結果的に「不都合、不便上等!」という寛大さを身につけるのだ。

 そこで筆者ははたと膝を打つ。

 思い通りにならない国で生きてきたブラジル人だからこそ、世界中のどこに行っても、順応することができるのだ、と。欧州や南米は言うに及ばず、厳寒のロシアだろうと、酷暑の中東であろうと、言葉も文化も違うアジアだろうと、彼らは、いつものことさ、と平気でいられる。不満はあっても、人生はそもそも理不尽なもの、という割り切りがあるのだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る