16年ぶりW杯王座へ。好調フランスが優勝候補に名乗り (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 ヒッツフェルト監督が「選手個人のミスから失点してしまった」と話していたように、2点目はベーラミの、4点目はDFセンデロスのミスから失点した。

 だが、それ以上にこの試合を決定づけたのは、フランスが見せつけた威力あるカウンターである。敵将も脱帽の体でかつての世界王者を称える(フランス代表は98年W杯フランス大会で優勝)。

「フランスはすばらしい能力を持った選手がすばやく動き、非常に危険なカウンターを仕掛けてきた。我々も守備はいいのだが、今日はそれが機能しなかった」(ヒッツフェルト監督)

 とりわけ鮮やかだったフランスのゴールは3点目。スイスの左コーナーキックからゴールまでつなげたカウンターである。

 まずはヘディングのクリアを拾ったベンゼマが、巧みにボールをキープ。サポートに来たDFヴァランヌにつなぐと、ヴァランヌは前線へと全力で飛び出したジルーへロングパス。これを受けたジルーがゴール前までボールを持ち込むと、最後は落ち着いて逆サイドへラストパス。駆け上がってきたMFヴァルビュエナがこれを難なく押し込んで、結果的に決勝点となるゴールを決めた。

 スイスボールのコーナーキックからゴールまでわずか15秒。瞬殺の切れ味だった。

「スコアほど簡単な試合ではなかった」と言いながらも、フランスのディディエ・デシャン監督は、隣国を圧倒した試合を「ほぼ完璧だった」と振り返った。

 チーム全体の高い連動性があってこその鋭いカウンターを次々に発動したフランス。このところのW杯は、前回2010年の南アフリカ大会をはじめ、チーム内の人間関係の問題などで、なかば自滅することが多かった。

 今大会、フランスは直前にエースのFWリベリーが腰を痛めてチームを離脱。良くも悪くも絶対的な存在だったチームの中心選手を欠くことになり、本番へ向けてチーム状態を不安視する報道もあった。だが、そのことで、むしろチームはうまくまとまったように見える。フランス代表が優勝した98年大会、フランスのキャプテンだったデシャン監督は「力のあるチームであることは疑いない」と言い、こう続ける。

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