ひらめきのGK、カシージャスはもう終わったのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 そんなカシージャスが2012~13シーズン、レアル・マドリードでジョゼ・モウリーニョによって「総合力に問題がある」とポジションを剥奪されることになった。そして監督がアンチェロッティに代わった2013~14シーズンもリーグ戦ではベンチが定位置。チャンピオンズリーグ、スペイン国王杯での起用になった。難しいコンディション調整をこなし、どちらのコンペティションも制覇しているのだが......。

 カシージャスは試合になったらスイッチを入れられる――それが筆者の、彼を取材したときの率直な印象である。

「ビデオで自分のプレイを眺めながら、"本当にこれは自分なのか"と疑うことがあるよ。こんな形相をして、こんな動きをして......まるでスーパーマンかなにかに変身したかのように思えるんだ」

 彼はそううそぶいたものだ。変身すれば、プレイ水準が下がることはない。これまではそうだった。

「僕は必要以上の練習はしない。なぜなら、試合の中でどれだけ集中できるか、が重要だから。感覚のほうを大事にしているんだ」

 カシージャスは昔からそう語っていたが、「練習不足のつけを払うことになる」と指摘する関係者は少なくなかった。

 なぜなら、カシージャスは瞬発力という身体能力の一つにより、そのファインセーブを生み出してきたからだ。だがブラジルW杯前に33歳になった彼は、精彩を欠くようになった。年齢的な衰えか、判断も鈍るようになった。もう一つ、試合の中での勘も冴えなくなっている。ここ2年、彼はコンスタントにリーグ戦には出ていない。それは卓越したゴールキーピングの才能を曇らせることになった。

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