スペイン敗退。前回王者が自滅したふたつの理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ユーロ2008、2010年W杯、ユーロ2012。優勝した3つの大会でも、その傾向は目立っていた。その結果、大会の前半では必ず苦戦した。2010年W杯では初戦のスイス戦で敗れている。第2戦のホンジュラスには1−0。そして第3戦のチリ戦も大苦戦した。

 だが、いずれの大会も、大会が進むにつれて、途中交代で出場するサイドアタッカーが活躍するようになった。ヘスス・ナバス、ペドロ、サンティ・カソルラが投入されると、ペースはガラッと変わった。

 デルボスケにはかつて計4度ほどロングインタビューしたことがあるが、そのたびに「攻撃には3つのルート(中央、右、左)を保っておくことが重要だ」と語っていた。

 一方、スペイン代表監督としてそれを試合当初から貫けない理由は、理解できた。中盤に優秀なタレントが多くいるからだ。彼らをいかにして有効にピッチに散りばめるか。そちらをまず追求するのは、スペインの事情を考えれば、仕方がない話かもしれない。だが、それだけでは敵を押し切れなかった。

 スペインはこれまで、中盤のパスサッカーだけで王座を守ってきたわけでは全くない。サイドアタッカーを投入する後半のなかばに、3つ(中央、右、左)のルートを完成させることで、相手を幻惑させることに成功。サイドアタッカー投入が、むしろ、相手の目先を変える有効な手段になっていたのだ。

 2010年W杯決勝対オランダ戦では、ヘスス・ナバスがその役を果たしていた。彼の登場でムードはガラリと変わった。その彼をデルボスケは今回、最後になってW杯メンバーから外した。

 チリ戦のスタメンには、オランダ戦とは異なり、ペドロがスタメンを飾った。右サイドにはサイドアタッカーがいた。しかし、左サイドにはいなかった。攻撃のルートは2つに限られていた。と同時に、スペインの左サイドには大きな穴ができていた。相手に突かれやすい状況が整っていた。

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