スペイン敗退。前回王者が自滅したふたつの理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 危ないムードは試合前からぷんぷんと漂っていた。デルボスケは、レアル・マドリード監督時代に自ら育てたGKと心中しようとしたわけだが、傍目には、心中する相手を間違えているように見えた。

 チリの2点目は、明らかにカシージャスのパンチミスだった。身体の正面に飛んできたライナー性のシュートを彼は正面に低くパンチで返したのだが、これがプレゼントパス同然になってしまったのだ。普通ならキャッチするボールだ。パンチするなら、遠く高く返すべきボールだ。それが彼にはできなかった。

 試合勘がない。CL決勝、オランダ戦で感じたことが三たび露呈された。チリに先制弾を浴びたシーンもしかり。ゴール前で足を滑らせるカシージャスが哀れに見えた人は少なくなかったはずだ。

 しかし、これはカシージャスのミスと言うより、起用したデルボスケのミスと言うべきである。

 デルボスケへの疑問は、これだけでは終わらない。

 初戦のオランダ戦。彼は中盤選手をスタメンにずらりと並べた。サイドアタッカーを投入したのは62分のペドロになるが、それまで4-2-3-1の3の両サイドを担当していたシルバ(右)とイニエスタ(左)は、ほとんどの時間、中央付近でプレイしていた。すなわち、そのパスサッカーは真ん中に偏っていた。真ん中で詰まるところをオランダに引っかけられ、高速カウンターを食らった。

 ボールは真ん中よりサイドで奪われたほうが、自軍ゴールまでの距離は長い。相手に身体の裏を取られることもない。だがスペインの場合はその逆。中央で奪われると途端にピンチに陥った。

 それはバルセロナのサッカーとの違いでもある。もちろん好調だった頃のバルサの話ではあるが。サイドアタッカー。これはバルサにあってスペイン代表にないものである。しかも今に始まった問題ではない。

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