ポルトガルに「省エネ」で快勝。ドイツ唯一の誤算は?

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 そして、試合を決定づけたのが、その5分後に起こったひとつの「愚かなプレイ」だった。それまでミュラーと激しくマッチアップしていたペペが、腕を使ってミュラーを倒した後、ミュラーが顔を手で押さえて大袈裟なゼスチャーをしたことに反応。あろうことか、頭突きを食らわせてしまったのである。

 パウロ・ベント監督は、「彼のこれまでの評判」という言葉でペペを擁護したが、これは誰が見てもレッドカード。一発退場に値した。所属するレアル・マドリードでも、かつて10試合の出場停止処分を受けるなど、ラフプレイがクローズアップされることの多いペペが、この大事なビッグマッチでまたしても「やらかしてしまった」のだ。

 2点をリードされてからもコーナーからエデルが惜しいヘディングシュートを放つなど、まだまだ反撃の可能性を残していたポルトガルだったが、10人になってしまうと話は変わる。前半のアディショナルタイムに生まれたミュラーの追加点は、弱ったポルトガルを完全に仕留めるには十分な一撃だった。

 開始10分のPKのシーンから、まるで坂を転がるように落ちていったポルトガル。65分には左サイドバックのファビオ・コエントランまでも負傷交代するなど、散々な試合となってしまった。

「もう、できることは何もなかった。最初の5分間以外、我々は試合の中にいなかったも同然だった」

 パウロ・ベント監督の嘆(なげ)きも当然である。たった1試合で1トップとサイドバック、そして守備の要も退場によって失ってしまったのだ。もちろん、グループリーグ突破のためには残るアメリカ戦とガーナ戦で連勝すればいいわけだが、もともと選手層は厚くないだけに、格下と見られるこの2チームにも苦戦を強いられることは必至だろう。

 加えて、チームの大黒柱であるロナウドのコンディションも万全ではない。この試合でも、序盤こそ存在感を示したが、時間の経過とともに消えてしまった感は否めない。もはやポルトガルは、絶体絶命のピンチに立たされたと見て間違いない。

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