開幕戦勝利もブラジルに不安。勝負分けた主審の判定 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 それでもこのままブラジルペースで推移していれば、ブラジル強しと言うべきかもしれない。だが、ブラジルはこのあとも守勢に回る。再び、クロアチアにいいサッカーをされてしまい、焦った。流れはすっかりクロアチアに傾いていた。

 クロアチアがブラジルゴールを割ったのは後半37分。同点ゴールがネットを揺るがしたと思いきや、主審の判定はキーパーチャージ。記者席に備え付けのテレビモニターで、画面に目を凝らす。西村サン大丈夫か? こちらの心配はもはや、ブラジルにではなく、主審に向いていた。

 主審の笛にとやかく言うのは良くないこと。とはいえそれは監督、選手の姿勢だ。我々記者はそうではない。ミスジャッジはミスジャッジと言うべき立場にある。

 この判定を「ミスジャッジ!」と言うつもりはないが、限りなくそれに近いものであることは確かだった。キーパーチャージと言うよりも、GKジュリオ・セザールのキャッチミス。ビデオはそう語っていた。

 クロアチアは、不運な判定にもめげず、なおも追い上げた。ブラジルはロスタイムに入った後半46分、オスカルが逆襲から3点目を入れたが、それはとても強さの証明には見えなかった。

 W杯は1ヵ月間のトーナメント。調子はその間に上がったり下がったりする。ブラジルの調子が、もし現在どん底にあるというなら、優勝候補の本命に推してもいいが、そうでない場合、その座は危ういというべきだろう。

 4年前赤紙を突きつけられた西村さんに、今度は助けてもらったブラジル。この原稿を書いている今まさに放送されているブラジルのラジオ局によると、西村さんは人気者に祭り上げられているのだという。中には、助けてもらったくせに「最低の主審だ」とこき下ろす不届きなブラジル人もいるとのこと。

 西村さんはこの先も、主審に抜擢されるだろうか。そしてブラジルは決勝まであと6試合戦うことができるだろうか。ともに微妙といわざるを得ないのだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る