2014.06.13

開幕戦勝利もブラジルに不安。勝負分けた主審の判定

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 だが、この日のブラジルにはそれ以上のラッキーがあった。その3分前に、ネイマールが相手ディフェンダーに対して行なった肘撃ちは、一発レッドでもおかしくない反則だった。だが、判定はイエロー。

 主審が西村雄一さんだったことと、それは大きな関係にある。彼は、前回南アフリカW杯でもブラジル戦の笛を吹いていた。準々決勝のオランダ戦。そこでブラジルは敗れた。勝負の分かれ目は、西村さんが下した判定にあった。守備的MFフェリペ・メロにかざした一発レッド。ブラジルの敗因はここにあった。

 ロッベンを踏みつけたフェリペ・メロに赤紙を出すことは妥当と言えたが、ブラジルサイドには、好ましくない思い出になる。

 というわけで「ニシムラ」の名前は、こちらでも知られていた。その名前を記憶している人は少なくなかった。

 西村さんにもその自覚はあったはずだ。自分がブラジル人からどう見られているか。想像できていたはずだ。FIFAから開幕戦の笛を吹く大役を任された時、それと同時に、ブラジルを意識したに違いない。

 その意識とは、4年後、開催国として開幕戦を戦うブラジルに対して「配慮」する気持ちであったとしても不思議はない。ネイマールの肘撃ちに、黄色を出すか、赤を出すか。彼は瞬間、少なからず迷ったと思う。そこで黄色を出した理由は、4年前を引きずっていたからに他ならない。

 後半25分、クロアチアDFロブレンは、自分に背を向けるブラジル代表のストライカー、フレッジの左肩に手をかけたことは間違いなかった。しかし、それでバランスを崩して大仰に倒れるほど、強烈ではなかった。主審泣かせのプレイではあるが、PKを取るほどの接触ではなかった。

 ブラジルはこのラッキーなPKをネイマールが決め勝ち越しに成功した。