クラブの試合とココが違う。これがW杯のサッカーだ (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 もっと格下のクラブでも、ゴリゴリに守備的な試合はしない。1シーズンは38試合あるから、1試合負けても世界が終わるわけではない。しかしワールドカップでは、1試合負ければ世界が終わる。

2 偉大な選手がひとりいればワールドカップを獲得できることもある

 そんな固い守備をこじ開けるには、天才が必要なこともある。ディエゴ・マラドーナは1986年、ほとんどひとりの力でアルゼンチンにワールドカップをもたらした。2006年にフランスを決勝まで導いたジネディーヌ・ジダンにも同じことがいえる。ワールドカップの試合ではクラブに比べて、スーパースターの存在がさらに大きなものになる。

 リオネル・メッシ(アルゼンチン)やネイマール(ブラジル)、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)はワールドカップに行けば、クラブのチームメイトより下手な選手たちと一緒にプレイすることになる。そうなると、彼らの力はいつも以上に重要になる。

 彼らが属する代表チームにとって一番の課題は、その才能をどうやって生かすかだ。前回2010年の南アフリカ大会では、アルゼンチンの監督だったマラドーナがこの点で大失敗を犯した。マラドーナはシステムを変更したのだが、それはメッシがハーフウェイラインでボールを受け、そこから9人の相手選手をかわしていくというものだった。

3 システムはよりシンプルに

 代表監督はクラブの監督に比べて、選手にシステムをたたき込む時間がはるかに少ない。むずかしいことはできないのだ。例外はスペイン代表監督のビセンテ・デル・ボスケのように、先発メンバーの大半を同じクラブから選ぶことだ(スペインの場合はバルセロナ)。そうすれば、複雑なシステムをすでに理解している選手たちで戦える。

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