貧困、暴力、腐敗...。ブラジルのサッカーが示しているもの (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

それでも、状況は改善に向かっているのかもしれない。フットボールという「拡大鏡」のおかげもあって、ブラジルの悲惨な現状は世界に広くさらされるようになった。昨年のコンフェデレーションズカップの期間中に行なわれたデモは、おおむね平和的で、参加者は中流層がほとんどだったが、ブラジルでは史上最大級のデモだった。人々は高いバス運賃から同性愛者への偏見まで、あらゆることに抗議していたが、彼らの怒りに火をつけたのはワールドカップへの巨額の出費だった。

 ブラジル経済の最近の発展によって、海外に移籍する選手は減っている。今大会のために新設・改築された12カ所のスタジアムのおよそ半数は大会が終われば無用の長物になるだろうが、残りの半数でブラジル人は安全で快適な環境でフットボールを見られるようになるかもしれない。

 今のところ、「ブラジルのゲーム」には醜い点ばかりが目立つ。これらの本は、「美しいゲーム」「サンバ」「1970年の栄光」といったブラジルの紋切り型のイメージをいったん捨てて、目前に迫ったワールドカップをしっかり見つめるのに役立つだろう。

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