マルセロ型とコエントラン型。W杯を彩る強力サイドバックたち (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 クロアチア代表のスルナ(シャフタール)も、トータルな魅力を持った右サイドバックだ。彼にボールが渡るとゲームは落ち着く。従来からクロアチアは、洞察力に優れたサッカーをする国だが、ボールがこの右サイドバックを経由すると、いっそう老練で、思慮深い集団に見えてくる。32歳のベテランならではの、しっとり感と今日性を併せ持つ好選手だ。

 ラームやスルナのような総合的な魅力を持つサイドバックは、日本人選手には存在しない。偉いのは真ん中で、サイドは端役という中盤至上主義が、日本のサッカー界に相変わらず蔓延しているからだ。

 ラームに倣(なら)い、長友佑都や内田篤人を守備的MFで試してみる手はある。実際、長谷部誠は、これまでドイツでサイドバックを幾度となく経験している。レベルはともかく、それこそが今日的な姿なのだ。そうしたユーティリティ性に長(た)けた選手が、代表チームに1人いれば、W杯のような短期決戦の大会では、とりわけ効果を発揮する。メンバーのやりくりはとても楽になる。

 もし左右のサイドバックに、サブを各1人あてがう余裕があるのなら、タイプの異なる選手を選びたいところだ。1人がカフーなら、もう1人はラームといった感じがいい。マルセロ(ブラジル代表)とコエントラン(ポルトガル代表)。レアル・マドリードで左サイドバックを争うこの2人も、対照的な関係にある。マルセロはロベルト・ カルロスの流れを汲むサイドバック。直進性に富んだドリブルが魅力であるのに対し、コエントランはパス能力に優れている。今日的なのは、周囲に絡む能力と中盤的なセンスが光るコエントランの方だが、マルセロにはいまどき貴重な爆発力がある(チャンピオンズリーグ決勝ではコエントランが先発。後半14分、マルセロに交代した)。

 ブラジル代表の左サイドバックには、マルセロと中盤的なセンスが光る元バルセロナのマックスウェル(PSG)が最終メンバーに名を連ねた。スペインリーグで今季のベスト11に選ばれたフィリペ・ルイス(アトレティコ・マドリード)は落選の憂き目にあった。周囲と多角的に絡む能力を備えた、今が旬な選手を落選させたルイス・フェリペ・スコラーリの判断はどう出るか。少しばかり心配だ。

 アトレティコでフィリペ・ルイスと左右のコンビを組むファンフラン(スペイン代表)も、今が旬な選手。中盤的なセンスも光る。スペイン代表の右サイドバックは、他のポジションに比べて力が落ちるといわれたが、その問題は、彼の台頭で解消されるに違いない。

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