CLレアル優勝。だが従来ないサッカーを見せたのは敗者だった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 レアルに逆転ゴールが生まれたのは延長後半5分。決めたのはFWベイルだったが、光ったのは、彼に正確なクロスボールを送ったMFディ・マリアだ。アトレティコは時間の経過とともに、このアルゼンチン代表の左利きを止められなくなっていた。この試合で最も切れていた選手になる。

 セルヒオ・ラモスとディ・マリア。今シーズン最後の試合で光ったこの2人は来るW杯でも活躍するに違いない。
 
 レアル・マドリードはすっかり歯車を狂わせたアトレティコからさらに2ゴールを挙げ、4-1で勝利した。チャンピオンズリーグ優勝回数はこれで10回目。1チームだけ異次元に突入した恰好だ。多くのメディアはそれについて書き立てるだろうが、この決勝戦で、従来のサッカーにはなかったものを示したのは敗者の方だ。

 今後のサッカー界に影響を与えそうな良いサッカー。僕には模範的なサッカーに見える。片やレアルは相手が引いて初めて力を発揮した。示したものは、勝負強さとツボにはまったときに見せた圧倒的な個人技だ。サッカーゲームそのものに影響を及ぼすサッカーだったとは言い難い。

 試合後、会見場に監督のシメオネが現れると、その場を埋めた記者団から一斉に拍手が湧いた。讃えられる敗者。日本が来たるW杯で目指すべきものだろう。とりわけ我々は、後半の半ばまでアトレティコが見せたサッカーを忘れるべきではない。勝者のサッカーより、ためになるヒントが詰まっていたと僕は思う。

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