「守備的MF」とは名ばかり。W杯を席巻するピッチ上の監督たち (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 むしろ攻撃的MFの方が相応しいのではないかと思わせる2人を、4-2-3-1の2に並べるクロアチアのやり方に、サッカーの今後の姿が垣間見える。守備的MFにあえて守り屋を置かない。潰し屋、壊し屋ではない技術系の選手で臨む。技術で主導権を握ろうとするサッカーは、いま世界に浸透しようとしている。

 W杯開幕戦でホスト国、ブラジルに対して、どんなプレイを見せるか。相当苦しめるのではないかと僕は思っている。

 それは日本に不足している考え方、文化と言うべきである。

 ボランチ。ブラジル人が持ち込んだこの言葉は、センターハーフ、セントラルMF的な解釈を、日本から失わせる結果になった。ボランチと攻撃的MF。気がつけば、MFは攻める人と守る人に2分されていた。4分割表記が浸透する遙か前からだ。それが10番、司令塔を変に持ち上げる結果になっていた。

 中間がなかった。50対50のスタンスでプレイする選手が育たなかった。

 50対50。ジェラード(イングランド代表/リバプール)、ランパード(イングランド代表/チェルシー)は、その代表的な選手になる。イングランドには中盤フラット型4-4-2の伝統がある。したがって、センターハーフは元々存在した。イングランド代表の布陣が4-2-3-1に変化しても、その概念には変化がない。4-2-3-1の2を務める両選手に、ボランチという言葉は似合わないのだ。

 4-2-3-1は4-4-2と4-3-3を足して2で割った中間型の布陣だ。4-4-2に近いものもあれば、4-3-3に近いものもある。日本の4-2-3-1は例外に属する。ベースにあるのはブラジル伝統の4-2-2-2。その変化形。4-2-3-1の2に、センターハーフ的な選手が見つかりにくい原因だ。

 まさに中盤らしい、中間的な選手はきわめて不足した状態にある。世界と比較すれば一目瞭然。日本にいそうもないタイプの中盤選手が、外国には数多くいる。

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