長谷部誠があえてこのタイミングで復帰を決めた理由

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 わずか1週間前には試合出場にほど遠い状態。フル出場も想定外。長谷部はとんでもない急ピッチで身体を仕上げてきたということになる。「自分の中では勝負どころだと思った」と言う長谷部は、大きな覚悟を決めてこの試合に臨んでいた。

「(W杯かリーグ戦か)何に重きを置くかではなくて、皆さん(集まった記者たち)はW杯のことを聞きたいだろうと思うが、ここで出来ることをやらないと、自分のためにならない。W杯というのは重要で、僕にとっても大きなもの。でも、ここで戦うことも大事。それをおろそかにすることは、自分は人間として納得できない。いろいろ葛藤はありましたが、結局この結果(シャルケ戦に敗戦、降格決定)になり責任も感じてるいし、何が正解か、何が失敗かいうことは今決めることじゃない。これからの自分次第です」

 いきなりの先発復帰にリスクがともなうことは本人にもわかりきっていた。だがそれでもあえて選択した。長谷部が「勝負をかけなければと」思ったのには理由がある。

「今季はここに助っ人という形で移籍してきたわけで、チームはそれなりの移籍金も払って獲得してくれた。それなのに前半戦は一度も勝てなかったし、後半戦はケガで今日しか出られなかった。そういう意味で責任を感じています」 

 そんなふがいない自分、という意識を払拭するためにも、この日、試合に出場することは必要だったのだ。もちろん、選手としての前向きな判断もあった。

「試合をすることによって戻ってくるものもあると思う。そういう意味では試合をやっていく時期なのかなとは思った」

 感覚や体力を実戦でとりもどす時期だという判断を下したうえで、この日を迎えたのだ。

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