仏リーグ連覇目前。世界一のクラブを目指すPSGの野望

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】パリ・サンジェルマンの奇跡(1)

 パリがフットボールの街だったことは一度もない。そもそもこの街には、まともなクラブがひとつしかない。僕は2002年にパリに引っ越したすぐあとに、初めてパリ・サンジェルマン(PSG)の試合に行った。

 その日PSGは、コルシカの小さなクラブ、アジャクシオと対戦していた。パリの観客は、コルシカからやって来た約15人のファンを無視していた。それどころか、試合自体もほとんど無視していた。代わりに何をしていたかといえば、本拠地パルク・デ・プランスの「白人」スタンドと「その他の人種」スタンドが、互いをののしる「ヘイト・チャント」を叫び合っていた(どちらもPSGをサポートしているはずなのだが)。

 スタジアムの外では、おしゃれな16区の通りで、PSGのファンがPSGのファンと小競り合いをしていた。アジャクシオはほとんど注目されることなく、コルシカに帰った(試合はドローだった)。

フランスリーグカップを制したPSG。リーグ連覇も目前だ(photo by Getty Images)フランスリーグカップを制したPSG。リーグ連覇も目前だ(photo by Getty Images) これまで長いこと、PSGの試合を見るのは1984年ごろのイングランドの試合を見るようなものだった。プレイはへたくそで、ファンは怖くて、スタジアムは空席ばかり。だがその後、PSGはスポーツ史にも残りそうな大変革を経験した。2011年にカタール・スポーツ・インベストメンツ(事実上、カタールの政府機関だ)がPSGを買収し、優れた選手を買いはじめたのだ。

 PSGは今シーズン、チャンピオンズリーグでは準々決勝まで進出し、フランスリーグではこの週末にも連覇を決めるかもしれない。そればかりかPSGは、やがて世界で最も豊かなスポーツクラブになる可能性もある。

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