CL準決勝は両者譲らず。唯一の勝者はF・トーレスだった

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi

 ビセンテ・カルデロン(マドリード)で行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)準決勝第1戦アトレティコ・マドリード対チェルシーは0対0の引き分けに終わった。決勝行きのチケットはスタンフォード・ブリッジ(ロンドン)で決着がつくことになったわけだが、この試合で唯一、勝利と同じような感覚を手に入れた選手がいる。

 スウェーデン人の主審、ヨナス・エリクソンが試合終了の笛を告げた時、スコアボードは試合開始の笛を鳴り響かせた時と変わらぬものだった。両監督が試合後の会見で認めたように、試合は準決勝特有の緊張感に溢れた、スペクタクルよりも負けないための戦術に溢れた展開だった。

歓声に応えるフェルナンド・トーレス(チェルシー)歓声に応えるフェルナンド・トーレス(チェルシー)「矛盾」という言葉がある。最強の矛と最強の盾をぶつけた場合、その矛と盾を販売していた商人の謳い文句はつじつまが合わなくなるというものだが、試合は欧州の中でも堅固さを誇る盾(守備)と盾の戦いとなった。両チームにはタイプこそ違うが、ディエゴ・コスタ、フェルナンド・トーレスという矛となる選手がいる。虎視眈眈とゴールを狙い続ける彼らのプレイを両チームの盾が打ち消し、90分の戦いの中ではサポーターの歓喜を引き起こすゴールは生まれなかった。

 アトレティコはこれまでの同チームのCL1試合平均の約2倍となる27本のシュートを放った。それに対して、チェルシーのシュートは1試合平均の約半分となる5本だった。数字の上ではどちらが試合のイニシアチブを握っていたかは一目瞭然だ。だが、サッカーではいくらシュート数が多く、ポゼッションが良くても、得点を決めなければ勝利の女神は微笑まない。

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