欧州日本人最多ゴールなるか?今季の岡崎慎司はここが違う (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

 試合前日、岡崎は2年半の間ともにプレイし、プレイスタイルもよく知るかつてのチームメイトなら「こう来るだろう、それならここを狙おう」と思い描いていたという。古巣相手ということでゴールを決めてもあまり喜ばないようにと考えていた岡崎だったが、久しぶりのゴールに思わずガッツポーズが飛び出してしまった。得意の飛び出しから奪った得点だったが、このゴールにはもう一つ重要な要素があった。ゴール前での駆け引きだ。

「落ち着いて股の下を狙って打てたので、自分にとって大きなゴールかな、と。今までだったらワンテンポ早く打っていたと思うんですけど、一回待ってのシュートだったので。ああいうところ(ゴール前での駆け引き)がゴールに繋がるんだなと思いました」

 このシーン、エリア内で受けた岡崎は左足にボールを持ちかえシュート体勢に入った。しかし、DFがコースに入ってきたため、シュートを放つタイミングを、DFの股が開くまで待ったのだ。

 時間もスペースもないゴール前で、1テンポでもシュートのタイミングを遅らせるというのは、相手DFに寄せられてしまう可能性があるため勇気のいる決断だったが、岡崎は感覚で「もう一個、待っても大丈夫だな」と判断を下したのだという。この得点はゴール前での駆け引きに自信を持つことができたという意味でも、岡崎にとって大きなゴールだった。

 裏への飛び出しからゴールを狙う上で欠かせないのがファーストタッチの精度だ。背後のスペースに飛び出してもスムーズなトラップでボールを持ちださなければ、戻ってきたDFにブロックされてしまう。だが、岡崎の飛び出しからトラップ、そしてシュートまでの一連の動きは非常にスムーズで、スピードが落ちない位置にファーストタッチでボールを運ぶことができる。そんな岡崎の驚くべきファーストタッチが発揮されたのがハンブルク戦(12月21日)だった。

 同点で迎えた後半ロスタイム、ハーフウェーライン付近からペナルティ・エリア手前まで走ってきた岡崎はDFの背後のスペースへ飛び出す。岡崎の動きを見た味方が浮き球のパスを送るも、相手DFに当たって軌道が変わり、ボールは岡崎の顔の前に飛んできてしまった。しかし岡崎は頭でボールをトラップすると、そのまま右足で押し込み決勝点を挙げたのだ。トップスピードのまま走り込み、とっさに頭でボールをトラップしたこのプレイは、岡崎の質の高いファーストタッチを象徴するゴールであった。

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