史上最速優勝。「強すぎるバイエルン」を印象付けた今季の3試合 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by Getty Images

 この試合にフル出場したヘルタの細貝萌は、「最後の最後で個人が球際で競り勝ってヘディングを決めてくることに関しては、やはり差がある」と、バイエルンの個人の能力、とりわけ高さについてその強さを認めざるを得なかった。

 バイエルンは、ターゲットが1枚で足りないのならば、2枚に増やして押し切ってしまうこともできた。それが第17節のシュツットガルト戦(1月29日)だった。控えFWピサロは184センチとドイツではそれほど長身ではないが、ボールの落下地点に入るのが上手く、ゴール前では脅威となる。マンジュキッチの高さだけでもやっかいなのに、もうひとつ高さのオプションが加われば相手はとても対応しきれない。

 この試合でもバイエルンは先制を許すと、相手の集中した守備に手を焼き前半はほとんど決定機を作ることができなかった。得意のパスワークが機能しないと見ると、グアルディオラ監督はピサロとマンジュキッチを立て続けに投入し、高さを活かした攻撃にシフトした。すると、そのピサロがFKに頭で合わせて追いつく。さらに、ロスタイムにはクロスボールに対して5人が突進し、フリーとなったチアゴが美しいボレーを叩きこんで劇的な逆転勝利を挙げたのだった。

 ここ数年の、とりわけ今季のバイエルンには、圧倒的なボール支配からショートパスでゴール前を崩すというイメージが強い。しかし、彼らの強さはそれだけではなく、苦しい展開を打開する高さという武器があるからこそ成立している。

 あらゆるチームがそれぞれにバイエルン対策を練ってくるが、バイエルンの圧倒的なボール支配にはどうすることもできずに自陣深くまで追い込まれ、最終的にはゴール前を固めるというチームも少なくない。人数を掛けてゴール前を固めれば、バイエルンとてパスワークだけでこじ開けるのは容易ではない。事実、グアルディオラ監督が以前率いたバルセロナはゴール前で「バスを止める」チームに対してはかなり苦しんだ。しかし、今のバイエルンには高さというオプションがある。ボールを支配して試合をコントロールし、ゴール前を固められたとしても最終的には高さでも押し切ってしまえるのだ。

 それは相手がリーグ屈指の守備力を誇るチームだとしても関係ない。昨季ミュンヘンでバイエルンに最後の黒星を付け、前半戦での対戦でも1-1のドローを演じてみせたレバークーゼンは、堅い守備からのカウンターを持ち味とするチームだ。そんなレバークーゼンが3月15日の対戦では、バイエルンの攻撃を封じるため、立ち上がりからなりふり構わず自陣に引きこもった。バイエルンといえど、ゴール前を11人で固められては地上から突破口を見出すことができず、ブロックの外からクロスボールを入れても跳ね返されるという展開となった。

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