逆境からCL8強進出。マンUに立ち直りの兆しは見えたか

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 そして目論見通り、後半7分にはファン・ペルシーがFKを直接決めて3-0として勝ち越しに成功。だが不思議なのはこのあとの戦いぶりだ。マンUは攻めに出なくなり、プレッシャーもかけないために相手に主導権を渡した。これでオリンピアコスはボールを楽に回せるようになり、シュートまで持っていく回数が増えた。

「時間を戻せるならば、ゴール前での動きを改善するか、守備のミスを防ぎたかった」と、試合後にミチェル監督は語っている。ラストの精度のところで選手の質の違いが出た感は否めないが、試合はオリピアコスペースで進んだ。

 仮に1点を奪われていたら合計スコアは3-3になるが、アウェーゴール数でマンUは敗退する。そんな中での消極的な戦いぶりは、CLでの経験という意味も含めて、指揮官の手腕があらためて問われるところだろう。モイーズは試合前、「3-0以上で勝たなければいけない」と選手たちに語っていたと言うが......。また、明言していた香川真司の出場は最後までなかった。

 マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのはもちろんハットトリックを決めたファン・ペルシー。確かに彼が決めることで試合を制した昨季を思い起こさせる勝利だった。だがこの日の最大の収穫は、ルーニーがここ最近で一番の出来だったことではないか。ピッチのあらゆるエリアで体を張り、ボールを奪取し、ミドルレンジのパスやファン・ペルシーへのラストパスなど、すべてにおいて輝きを見せたのはさすがという他はない。さらにモイーズとの不仲がささやかれたギグスは、90分間にわたって質のいい動きを見せ続けた。

 モイーズは試合後、「この一戦をターニングポイントにしたい」と語っている。チームの士気という意味でこの結果は大きいし、マンUはわずかとはいえ、立ち直るための時間を得た。つかのまの喜びにひたりたいということなのだろうか、ルーニーは「ファンのための勝利」と、またCLに出場できない(※)マタは「なんという復活劇」と、それぞれtwitter でつぶやいている。

※前所属のチェルシーですでに今季、CLの試合に出場しているため

 ただし試合内容の薄さを考えると、このチームが立ち直ったとはとても言えない。特に今後の強豪との対決はまだまだ心許ない。試金石は25日のマンチェスターダービーとなる。

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