アンチェロッティが語る「レアルで自分がやるべきこと」 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ニルス・リードホルムが率いるASローマでプレイしていたとき、アンチェロッティは驚いた。「試合の前にホテルに着いたら、レストランのメニューから何でも選ぶことができた。あのころはダイエットという考え方自体がなかった。試合でプレイした後には、こんなことを言われた──いちばんいいトレーニングは、翌朝に足が痛くなるようなものだ。階段を上がって2階に行けないようなら、それはいいトレーニングをした証拠だ、ってね」と、アンチェロッティは笑う。今なら選手はトレーニングのときにGPS機器を体に着けていて、フィジカルトレーナーがそれぞれの選手に適切なトレーニング量をはじき出すようになっている。

 最近のしっかりしたプロ選手は監督と争ったりしないと、アンチェロッティは言う。彼がうまくつき合えなかった選手は今までいたのだろうか。「いいや」。

 アンチェロッティはたばこの煙を吐く。レアルの選手たちは言うことを聞くし、試合の途中でフォーメーションを変えても適応する頭脳がある。「一流の選手は何を言っても、すぐに理解する」。特にシャビ・アロンソは、フィールドの中の監督だ。

 レアルにはすばらしい選手がそろっているし、昨シーズンの収入は5億1890万ユーロ(現在のレートで約726億円)と史上最も豊かなスポーツクラブだ。それなのに、なぜチャンピオンズリーグを2002年から制していないのか。

 アンチェロッティはくすっと笑う。「どうしてだろう。これはクラブが問いつづけている疑問だ。10年以上も決勝に進んでいないなんて、ちょっとおかしい。でも準決勝には3年連続で進んでいるから、そんなには悪くない」

 チャンピオンズリーグ制覇を待ちつづけるレアルのファンをさらにいらつかせるのが、次に優勝すれば、史上初めて10度目の王者になるということだ。アンチェロッティが「ラ・デシマ(スペイン語で『10度目』)を達成するには、まずシャルケ(ドイツ)と対戦する2月26日からのラウンド16を勝ち抜かなくてはならない。しかもレアルには、もちろんリーガ・エスパニョーラ制覇の期待もかかる。

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