ますます高まってきたバイエルンCL連覇の可能性 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 見逃せないのは、チームと監督の相性がいいことだ。バイエルンを代表する選手はリベリーとロッベン。左右の両ウイングだ。そのグアルディオラのサッカースタイルの象徴と言うべきポジションに、従来のエースをスムーズに置くことができる。これは大きなメリットだ。もし、ゲームメーカーだった中心選手にサイドに回れと言えば、彼らのプライドに傷がつく。監督との関係もギクシャクする。だが、リベリー、ロッベンとグアルディオラにその心配はない。
 
 2-0で勝利したアーセナル戦では、右で構えるロッベンにボールが渡った瞬間、そこがボール回しの起点になっていた。「ウイングがボールを受けた瞬間、その高さが中盤のラインとして確定される。相手はそのラインまで引いて守らざるを得なくなる」と言ったのは、グアルディオラの師匠クライフだが、ラグビー的に言えば、そのラインとはゲインラインを意味する。陣をその位置まで獲得したことになる。

 途中からアーセナルが10人になったため、その分を割り引いて考える必要があるが、彼らはロッベンにボールが渡ると、低い位置に押し止められる仕組みになっていた。アーセナルは必要以上に受け身になってしまった。

 もともと、グアルディオラのサッカーがしやすい環境がバイエルンにはあった。この事実は大きい。そのうえバルサにはなかった強さ、迫力を感じる。バイエルンはドイツのチームであり、ドイツには元々フィジカルなイメージがある。現在のスタメンにドイツ人は3名程度しかいないが、相変わらずどこか怖そうな雰囲気がある。バルサより数段、骨太な印象を受ける。

 言い換えれば、ラブリーな感じではない。

 欧州サッカーの魅力をどこに感じるかは人それぞれだが、僕の場合は混沌だ。様々な価値観を持ったチームがひしめき合う姿、クセ者たちが乱立する構図に最大の魅力がある。24年間も連覇したチームが現れないことを、僕はどちらかと言えば好意的に捉えてきたクチだ。

 このままいけば、バイエルンが2連覇を飾る可能性はかなり高い。24年ぶりの瞬間を見たいような、見たくないような、今はとても複雑な気分だ。

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