マンU絶不調で噴出。香川真司、この冬の移籍はアリか (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by GettyImages

 最大の理由は、現在のマンUには香川を放出している余裕がないことだ。あらゆる意味でチームの核であるルーニーが、今季は負傷がちで出場機会が激減。本来であれば、将来的にポストルーニーを担う存在として獲得された香川がその役目を果たすべきなのだが、現状では得点力という意味でも、中盤の構成力という意味でもそのレベルには至っていない。それでもルーニーに退団の噂が絶えない中、主力選手らと出場した際にある程度のパフォーマンスが見込める香川を放出している場合ではない、というのだ。

 昨季のプレミア得点王ファン・ペルシーも、ケガのため11月下旬から欠場しており、デイリー・ミラー紙などの報道では移籍の噂もある。記者会見の席上、イギリス人記者がモイーズ監督に「ファン・ペルシーにとって、このチームにいることは幸せではないのではないか」と、かなり気を遣いながらたずねたこともあった(モイーズ監督は否定)。また、今季わずか8試合出場にとどまっているナニについても、デイリー・エクスプレス紙が「ユベントスが興味」と報じている。チーム状態が不振を極める中で、移籍の噂はむしろ香川以上に昨季までの主力選手の周囲で飛び交っている。

 その一方で、モイーズが望んでいるとされる補強の状況は厳しそうだ。名前があがっているのは、昨年の夏に補強しようとして失敗したとされるスペイン代表MFコケ(アトレティコ・マドリード)、MFエレーラ(ビルバオ)のほか、DFベインズ(エバートン)、FWディエゴ・コスタ(アトレティコ・マドリード)ら。だがどれも現実味を帯びた話にはなっていない。アトレティコ・マドリードの名前がよく出てくるのは、昨年12月にモイ -ズが視察を行なったためである。思うような補強が不可能なら、現有戦力で戦うしかない。

 ちなみに英国の各メディアは「gossip」や「rumour」という小見出しをつけて、まだ決まっていない移籍に関しても堂々と報じる。BBC(英国放送協会)のような信頼の厚いメディアでもウェブ版は同様で、移籍に関する他メディアの報道をチェックしてリストアップしたりしている。「選手の移籍はある種のエンターテインメント」(イギリス人記者)であり、何を報じてもあまり責められないという風土もあって、的中率が高いとは言いがたいのだ。

 話を香川に戻すと、果たして香川が長期間にわたりこのチームでプレイし続けることがベストなのかと問われると、はなはだ疑問ではある。新天地を目指すのは悪いことではない。ただしW杯のことを考えると、香川本人にとってこの冬の移籍はリスクが高いのは事実である。

 苦境のチームで結果を出しながら、自他ともにいかに輝くかを模索していく。今季の残り試合はそんな戦いをしていくことになるのではないか。

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