ミラン番記者が語る「本田圭佑が活躍できる根拠」 (3ページ目)

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi
  • photo by Getty Images

「(本田がイタリアのサッカーに即応できるかどうかを)懸念する声が一部にあるのは、きっと本田のプレイそのものに『速さ』がないという部分に起因しているのでしょうが、それは実に表面的な見方であって、詳細を見ていない人たちが受ける印象でしかないと思います。つまり、一見するところメッシ(バルセロナ)やロナウド(レアル・マドリード)ほどの速さはないとしても、その実、本田には『思考スピード』の速さが実に高いレベルで備わっている。短距離走者のようなスピードはなくとも判断は速い。

 一概に比較はできないとしても、例えばアンドレア・ピルロ(ユベントス/イタリア代表)はどうか? 誰もが知るとおり速い選手ではないし、むしろ彼は『遅い』選手、しかもフィジカルははっきり言って弱い。ところが、あくまでも『思考スピードの速さ』ゆえに他の選手が遠く及ばない次元にまで達しています。その意味で、本田はピルロよりも格段に強いフィジカルを持ちながら、ピルロほどではないまでも、かなりの思考スピードを持っているのだから、4−3−2−1の『2』のポジションであっても、その真価を発揮してみせるでしょう。

 宿敵であるミランが強くなるのは困ったものですが、ミラノ・ダービーだけでなくイタリアサッカー界全体を盛り上げるという意味で、本田の加入を心から歓迎したいと思います」

 その他、15人の記者や関係者に話を聞いたが、その見解はおおむね上記ふたりに近い。ミラノ以外の街、たとえばフィレンツェでも、記者たちはもちろんファンも、またイタリアサッカー協会関係者も、ユースレベルの監督たちも、本田の実力を高く評価している。

 そのうえで、あえて記しておくべき留意点があるとすれば、それはやはり「名門ミランの10番」の重さであろう。ところがその点も、ミラン番記者のルイウは「問題ない」とあっさりと言う。
 その理由はこうだ。

「ジャンニ・リベラに始まり、後にグーリットやサビチェビッチ、ボバンやルイ・コスタに受け継がれてきたミランの10番。たしかにその重さは一定の水準にあるだろうが、しかし、ミランのそれはたとえばユベントスとは大きく異なる。クラブ文化の違いだ。

 ユベントスはプラティニ、バッジョ、デルピエロと、まさに10番こそがクラブの顔であり、その伝統の象徴とされてきた。だが、ここミランではクラブを代表する番号はバレージの6番であり、マルディーニの3番であり(ともに永久欠番)、しばらく前はピルロの21番であり、また現在ではカカの22番がそれにあたる。案ずるには及ばない。本田は『本田らしく』堂々とプレイすればそれでいい。ファンもそれを期待している」

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