ミラン番記者が語る「本田圭佑が活躍できる根拠」 (2ページ目)

  • 宮崎隆司●取材・文 text by Miyazaki Takashi
  • photo by Getty Images

「本当に、本当に心の底から楽しみで仕方がない」

 その番記者とは、25年に渡りミラン一筋、記者というよりはもはやミランの一部、クラブ内部に深く精通するクリスティアーノ・ルイウ。あのイブラヒモビッチに対してすら極めて厳しかったことからも分かるように、その見方は実に辛辣(しんらつ)である。

 もっとも、ミラン番がこれほど長いということはつまり、かつての黄金時代(80年代後期から90年代中期)を知り抜くということである。ファン・バステン、グーリット、ライカールト、バレージにマルディーニ、サビチェビッチからシェフチェンコ、カカからロナウジーニョに至るまで、そのすべてを目の当たりにしてきたからこそ、新たに加入してくる選手への評価は常に手厳しい。もちろん、ミランが財政難にあえぐがために、選手の質が相対的に落ちた昨今はなおさらである。

 ところが、その辛辣であるはずのこの記者が、こと本田に関しては一貫して賛辞を惜しまない。むしろ、2013年7月から8月にかけて本田の移籍騒動の際、ただひとり「本田のミラン入りは間違いない」と主張し、積極的に「本田獲得の意義」を唱え続けていた。
 
 その理由を問うと、彼は次のように答える。

「ミランでは、レアルやバイエルンといった他のビッグクラブと同じように、ただうまいだけでは絶対に認められない。むしろ、備えている技術以上に重要なのが、もの凄い重圧をものともしない精神力、ハートの強さだ。その意味で、本田は両者を兼ね備えている。それだけではない。うまくて強いうえに彼はもうひとつ、イタリアで成功するうえで欠くことのできない要素を持っている。それは『順応性』という名の頭の良さ、すなわちサッカーにおけるインテリジェンスであって、言うまでもなく戦術面でもその順応性は極めて有効だ。

 たしかにロシアからイタリアへ移るのは簡単ではないだろうが、本田なら苦もなく馴染んでみせるだろう。だからこそ、あれほど難しかった交渉をガッリアーニ以下首脳陣は粘り強く続けた。間違いない。本田はミランの10番に恥じない活躍を必ず見せてくれる」

 やや褒め過ぎのように聞こえるかもしれないが、上の言葉は、今回の取材に答えるうえで同記者が「言質として残しておいてくれ」と書き送ってきたものだ。ちなみにその文面には、「少なくともクラレンス・セードルフのレベルにまで達するはず」とも書かれている。

 一方で、インテル番記者がどう見ているかと問えば、クラウディオ・ガリオーニは、次のように淀みなく語る。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る