コロンビア率いる名将ペケルマン。その哲学と弱点 (3ページ目)

  • 三村高之●文 text&photo by Mimura Takayuki

 チームに核となる選手を作ることにはリスクもある。負傷や出場停止で出られなかったり、対戦相手による研究が功を奏して潰されると、一挙に戦力がダウンするのだ。実は06年ドイツW杯では、ペケルマンは自らの采配でこの状況を作ってしまった。地元ドイツと対戦した準々決勝、1-0でリードしていた72分にリケルメを下げた。逃げ切りを狙った守備固めのためで、ディフェンス力の低いリケルメに替えてボランチのカンビアッソを送り込んだのだ。しかし、これが裏目に出る。リケルメの脅威が去ったことで、ドイツは大胆な攻撃を展開できるようになった。その結果、同点に追いつかれPK戦で敗れている。

 リケルメを替えるのは、これまで貫いてきたスタイルを否定することだ。守備固めはセオリーとはいえ、この「禁断の手」を打ったのは、ペケルマンの小心さによる。小心というと聞こえは悪いが、彼は非常に繊細で慎重な性格だ。地元の強豪ドイツ相手に1点リードという展開で一種のパニックとなり、極端な守備固めに走ってしまったのだ。

 彼は試合前に仕事を終えてしまうタイプの監督で、ベンチワークが巧みなほうではない。したがって対戦する日本代表とすれば、試合中にプレイスタイルを変えるなどして、相手ベンチが動くように仕向けるのが得策かもしれない。

 ブラジルW杯グループリーグ第3戦、日本はペケルマンをあわてさせることができるだろうか。

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