マンUがCL決勝Tへ。香川真司の意識にも大きな変化が

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

 強く言い切るが口調は穏やかだった。出場機会の少ない時期は、口調にもいら立ちや焦りが混ざっていたものだが、この日は手応えや自信がにじんでいた。得点に結びつくプレイ以外にもこの日は大きな働きをし、そのことに納得している様子がうかがえた。

 トップ下の香川がコンビを組む相手はルーニーだった。これまで渇望と言っていいほど希望してきたポジションで、しかもかねてから「やりやすい」と言っていたルーニーとのコンビが実現した。

 香川自身がゴールを狙う回数は思いのほか少なかった。前半32分にドリブル突破からシュートを放ち、後半4分にはバレンシアのクロスに体ごと飛び込んだものぐらいだろうか。一方でチャンスを演出する側に回ることは多かった。先制点と4点目の起点になった他、香川のドリブルから得たフリーキックでの得点もあった。そこには複雑な思いがあった。

「今は周りを生かす方にまわっているから、自分もその中でフィニッシュまでいけるように頑張りたい。やっぱりこのチームは個の力が強い選手が多いから、そういう選手を生かせる選手が目立つところもあると思う。でも、それだけじゃなくて自分も生きるようにしっかりやりたい」

 これまでの香川は「得点を意識したい」の一点張りで、まるで自分に対して暗示をかけるかのように、ことさらに強く口にしていた。それが、「周囲を生かしつつ、自分も生かされたい」と言うところに、心境の変化が感じられた。連続で先発起用されるようになり、余裕が生まれたことも変化の一因だろう。だが、それ以上に大きな理由は、この日コンビを組んだルーニーのプレイにあるのかもしれない。ルーニーとのコンビについて問われた香川はこう答えている。

「本当に常に周りを生かしてくれる。それでしっかりと得点にも絡める選手だから、自分は合わせてもらっている感じがする。すごくやりやすい。楽しいですね」
 

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