けっこうヤバイ?本田圭佑が移籍するミランの実情

  • クリスティアーノ・ルイウ●取材・文text by Cristiano Ruiu 宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi

「もはや本田圭佑のミラン入りは動かぬ事実」

 つい数カ月前、日伊露のメディアとファンを混乱と喧噪に巻き込んだ移籍騒動は記憶に新しいが、結果として今、2013年11月半ばにして明言できるのが、冒頭の一文である。

 ミランの100年を超えるクラブ史上初の日本人選手となる本田だが、彼を待ち受ける状況は必ずしも理想的とは言えない。むしろ、クラブ史上最悪の、とまでは言わないにせよ、少なくとも現ベルルスコーニ体制となって以降の28年間では最も難しい状況にあるミランへ入る。そう言って差し支えないだろう。

今季、リーグで苦戦が続くミラン。本田加入で浮上はなるかphoto by Getty Images今季、リーグで苦戦が続くミラン。本田加入で浮上はなるかphoto by Getty Images それほど今季のミランは苦境に立たされている。クラブ経営収支の悪化から破綻寸前までいったのがつい2年ほど前。当時の絶対的な主力、ズラタン・イブラヒモビッチとチアゴ・シウバの放出を余儀なくされ、加えて選手の大幅な年俸カットを断行。約7000万ユーロ(約91億円)にまで膨らんでいた単年度収支の赤字を約400万ユーロにまで縮小することに成功した。

 しかし、チーム力は大幅に低下。2年前には中盤の要であるアンドレア・ピルロまでも、人件費削減のためにユベントスへ放出したのだから当然である。ここ2シーズンは辛うじてチャンピオンズリーグ(CL)出場権を得てはいるものの、今季の成績(第12節終了時=勝ち点13で11位)が示すとおり、およそ中堅クラスのクラブとなった。

 当然、現在のクラブ内では、いくつもの問題が次から次へと表面化している。首脳陣らの権力争いは選手たちに悪影響をもたらし、監督はその負のスパイラルを何とか食い止めようとするも、肝心の支えとなるべきクラブ体制が揺らいでいる。さらには、その混乱に拍車を掛けるようにして故障者が続出している。

 つまり、アドアーノ・ガッリアーニGMを筆頭とする体制の強固さによってクラブ史を築いてきたミランにとって、初めてというべき不穏にして危機的な事態に置かれているのだ。そこへ本田は加入する。しかも、イタリアサッカー初挑戦である。オランダとロシアで揉まれてきた経験豊富な本田はすぐに適応するのであろうが、とはいえ一抹の不安は残る。

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