アーセナル戦勝利で確かになった香川真司、マンU内の「序列」 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by GettyImages

 さらにこのビッグマッチに勝利したことは重要だ。この試合だけでなく、香川が出場するようになってからの6戦は、アウェーのソシエダ戦に引き分けた以外は全て勝利を収めている。チームが調子を上げた時期と、モイーズがマンUの監督に慣れてきた時期、そして香川が出場機会を得だした時期が、単に一致しただけとも言えるが、香川がチームの調子を上げる一因だったと見ることもできる。

 もっともアーセナル戦後の香川の表情は冴えたものではなかった。

「すごく難しい試合だった。今の時点でチームとしては勝つことが大事だったんで、勝ち点3を取れたのはよかった」

「取れたのは」と強調するのは、他は良くなかったという意味だ。初めてプレイしたプレミアのビッグマッチの感想を尋ねると、さらに口調はどんよりとした。

「そうですね。初めてですし、こういう戦いをもっと、自分の中で充実したものにしていなきゃいけないですし、経験していかないといけないのかなと感じました。使ってくれた監督に感謝すると同時に、自分自身、もっともっとこういうところで輝けるようにやっていきたいなと思います」

 これも、まだまだ輝きが足りないと思っているということだ。

 確かにこの試合、香川にとっては苦しいものだった。チームが後半は守備的になる中で、香川のゴールまでの距離は長かった。左MFでプレイし、クロスを上げること自体は以前よりも増えたかもしれない。だが香川自身はなかなかゴール前に入れない。たとえ入ってもシュートまでいけない。そのあたりが香川の表情が冴えない理由だろう。交代直前の75分、ペナルティエリア内でクレバリーのパスに抜け出すかというシーンもあったが、シュートを打つまでには至らなかった。

「あそこの場面は、パスを出すふりして、中に切り返して左で打てたんじゃないかと、やった後に悔いがありました。ああいうところでいかに冷静に前を向いてシュートを打てるか。経験するしかないし、こだわっていくしかない」と、香川はそのシーンを悔しそうに振り返った。

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