「特別な一戦」に完敗。ドルトムントを称える内田篤人

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

 一方のドルトムントはゲッツェが去り戦力ダウンかと思われたが、今季は今季で新しいチームが出来上がっている。高速プレスからのショートカウンターというスタイルは変わらないが、そのシステムにMFムヒタリアン、FWオウバメヤンと新戦力がフィットしている。先週のチャンピオンズリーグ、アーセナル戦も、地力で勝利したと言っていい。2011~12 シーズン、香川真司がいたドルトムントがアーセナルには歯が立たなかったことを考えると、全体的にチーム力が底上げされた感がある。また、負傷者はギュンドアンくらいで、連戦に耐えうる戦力が控えている。

「チャンスもあったんだけど、前がかりになって中盤でさくっととられるとああなっちゃう」と、内田篤人は失点シーンを振り返った。

 14分、ドルトムントの先制点は、最終ラインからの速い縦パスを右サイドでグロスクロイツがつなぐと、ムヒタリアンとMFロイスがスピードに乗ったパス交換を見せ、最後はゴール前に走り込んだオウバメヤンがピンポイントで決めた。もともと揃っていなかったシャルケのディフェンスは、この高速パス交換にまったく対応できず、難なくやられてしまった印象が強い。

 51分の2失点目はMFヌリ・シャヒンの個人技だった。ムヒタリアンがドリブルで持ち上がると中央のシャヒンへ横パス。ペナルティエリアまではまだ距離があったが、シャヒンはシュートを選択した。ディフェンスの間を縫ってゴール右上に突きささる技ありゴールだった。

 3点目は74分、カウンターから。シャルケが左サイドから組み立てようとしたボールをさらわれ、ムヒタリアンがドリブルで一気にゴール前まで運び、最後はMFブラシコフスキが流し込んだ。内田はセンターサークル付近で「イエロー覚悟で」ドリブルを止めようとしたが、スピードに追いつけず、「かわされた」と、力なく振り返った。

 ドルトムントの得点はどれもスピードがあり、意図のはっきりしたものだった。とはいえシャルケにも勝機はあった。まず前半30分のPKが一つ目のチャンスだった。このPKが決まっていれば、これほどまでに流れがドルトムントに傾くことはなかっただろう。また、62分にマイヤーが得点、1-2と迫った時間帯に追加点を決め切ることが出来ていれば、その後の展開もまた違っただろう。

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