12年ぶりW杯出場のベルギー。ダークホースと呼ぶには強すぎる!

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by GettyImages

 ルカク、フェライニ、ヴィッツェル。この大型選手に絡む小兵がまた良い味を出している。左ウイングのアザール(チェルシー)と、ヴィッツェルの脇で構えるドフール(ポルト)だ。 アザールは技術の高さが売りで、ドフールはそれに加えて勤勉さが特長だ。これに縦へのスピードが自慢の右ウイング、デブライネ(チェルシー)を加えた攻撃陣はとても多彩で、新鮮みに溢れている。どこの国にもない魅力といっていい。

 監督はヴィルモッツ。2002年W杯でベルギー代表の10番をつけてプレイしていた貫禄のある選手だった。日本戦で鮮やかなオーバーヘッドキックを決め、一瞬、日本中を押し黙らせた選手いえば、お分かりいただけるだろうか。

 恐れ入ったのは、この試合が雨中の一戦だったにもかかわらず、ベンチに座ることなく、ずぶ濡れになりながら観戦していたことだ。時に激しいアクションを交えながら。現役時代そのままの闘将ぶりを見せつけたが、一方で采配はクールだった。

 ルカクのスピードが少し衰えたかに見えると、トットナムのシャドゥリを左ウイングの位置に投入。いわゆる戦術的な交代を見せた。センターフォワードの位置に移動したのはアザール。身長173センチの小兵がトップを張る姿は、少しばかりメッシを彷彿とさせた。すなわちヴィルモッツは、アザールを「0トップ」気味に使ったわけだ。終盤を迎えてボール支配率を高めようとする作戦だが、こうした大一番で、このような采配をけれんみなくできる監督はそう多くいない。

 ベルギーは終盤、クロアチアに1点奪われ、2対1で試合を終えたが危なげは全くなかった。レベルの違いを見せつける勝利だったといってもいい。

 このチームは簡単には止められないと僕は思う。何といっても新鮮で、驚きがある。これぞダークホースに不可欠な要素になるが、守備的だったとはいえ、実力派のクロアチアに対し、アウェーで完勝する姿を見ていると、ダークホースと呼ぶにはいささか強すぎるような気がする。優勝候補とは言わないけれど、ベスト4を狙う力は十分にある。ブラジル、アルゼンチン、スペイン、ドイツ……。とりわけ優勝候補にとってやりにくいチームだと僕は思う。

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