序盤好調のナポリ。新加入イグアインがファンに愛される理由 (3ページ目)

  • アントニオ・ジョルダーノ●文text by Antonio Giordano
  • 内海浩子●翻訳 translation by Uchiumi Hiroko

 セリエAでもナポリは素晴らしいスタートを切った。イグアインの天分と、今までよりもさらに増してチームの中心となっているハムシクを生かすシステムを取る指揮官ベニテスの能力は素晴らしい。だが自らゴールを決めチームメイトにゴールを決めさせるイグアインはベニテスのシステムに応え、4000万ユーロを出して良かったと思わせるパフォーマンスを見せているのも同様に称賛に値する。

 エル・ピピータ(イグアインの愛称)はピッチの外でもナポリッ子の心をしっかり捕えているが、そのきっかけとなったエピソードがある。

 ナポリに到着して間もない頃、彼は海沿いのホテル住まいだった。しばらくして部屋の窓から見えるカプリ島へと船を出した彼は、島の美しさにうっとりとしていたのだが、それで気持ちが舞い上がりすぎたのか、船から海へ飛び込んだ時に顔を打ちつけ、何針も縫うほどのケガをしてしまったのだ。彼にとっては不運な出来事ではあるが、我々はそういうところに親近感と愛を感じずにはいられないのである。

 ホテル住まいを経て、カバーニも住んでいたマタラッツォ公園内の住居を選んだことも我々をうなずかせ、彼はさらに愛される存在となった。イグアインとしては景観の良さで選んだのかもしれないが、そこにはカバーニのようにナポリで成功するようにという縁起担ぎもあったのではなかろうか。“ゲン”は誰にとっても大切だが、特にナポリでは重要不可欠なものなのである。

 こうして今、イグアインはナポリという町全体からわが子のように愛しまれる存在となっているのだ。

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