序盤好調のナポリ。新加入イグアインがファンに愛される理由 (2ページ目)

  • アントニオ・ジョルダーノ●文text by Antonio Giordano
  • 内海浩子●翻訳 translation by Uchiumi Hiroko

 ディエゴは不可侵領域だ。ナポリの地で彼は神そのものなのだ。そのマラドーナによる、これ以上にないプレゼンテーションによってイグアインはナポリに登場することになる。

「彼はオレのお気に入り。正真正銘のアタッカーだ。得点王争いを制することになるだろうな。彼は真のアルゼンチン人だから、トリノへなどそもそも行くはずがなかったのだ」(マラドーナ)

 それが挑発であることをトリノを本拠とするユベントスは知っている。カルチョ界のベッキア・シニョーラ(老婦人=ユーベの愛称)は、ナポリがイグアインにアプローチをかける前から彼を追い求めていた。だが、2500万ユーロ(約33億円)のオファーは、彼を手にするには低すぎた。全くもってマラドーナ的なこの発言は、ユーベとナポリとの永遠の対決に再び火をつけたのである。

 カバーニとの決別が確定した時、イグアインには手が届かないと考えていたナポリは、まずマリオ・ゴメス(現フィオレンティーナ)に目を付けた。ところが実際にアプローチしてみると現実はその逆。こうしてパリから入ってきた6400万ユーロの中から4000万ユーロ(約52億円)を使ってレアル・マドリードと話をつけたのである。

 本人との交渉も難しくはなかった。リーガ・エスパニョーラ通算190試合で107ゴールというゴールマシーンのイグアインだが、クリスティアーノ・ロナウドのいるレアルではベンゼマとポジションを分けあわねばならず、レギュラーを取れずにいた。それならナポリの方がいい。ここはディエゴの神の国であるだけでなく、ポチョ・ラベッシ(2012年、パリSGに移籍)の町でもある。ナポリが親愛を抱きアイドルとして崇めたアルゼンチン選手の列伝に名を連ねるポチョとは、彼の体がこの地を離れた後も心情的つながりが切れてはいない。

 イグアインはサンパオロ(・スタジアム)のティフォージに熱烈歓迎され、その熱さをエネルギーにするかのように彼らへ夢を還元している。チャンピオンズリーグ初戦では、昨季の準優勝チーム、ボルシア・ドルトムントを破る立役者となった。

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