ダービー大敗。香川抜きのマンUに未来はあるか?

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi photo by AFLO


「(もはや加入)1年目ではない。このチームに『何かを』残していかなければならない。それがどんな状況であれ、結果に結びつけなければならない」

 レバークーゼン戦後、香川がミックスゾーンで語っていた「何か」の中には、ユナイテッドの攻撃戦術をさらに進化させるという意味が込められていたはずだ。それは昨シーズン、サー・アレックス・ファーガソン前監督が香川を獲得した際に期待したように......。だが、新生ユナイテッドが進化を目指すべき『パス&ムーブ』のダイレクトプレイは、皮肉にもダービーで、ライバルのシティに見せつけられることになったのである。

 ダービーでのシティは、緩急をわきまえた多彩な攻撃面において、昨シーズン以上の進化を感じさせた。FWネグレドが前線で激しいプレスを仕掛ける一方、アグエロ、ナスリを中心とするテクニシャンが巧みにショートパスをつなぎ、さらにサイドバックやボランチの攻撃参加をうながしてアタッキングサードへと迫っていく。そして、いざフィニッシュへのスイッチが入れば、サイド、中央を問わず、クオリティの高いパスとクロスから、一気にゴールを奪っていった。

 一方、ファン・ペルシーの欠場により、ルーニーとウェルベックの2トップでスタートしたユナイテッドは、左MFにヤング、そして右MFにバレンシアという純正ウイングを配置し、中央には新加入の巨漢フェライニと職人肌のキャリックという組み合わせでダービーに挑んだ。だが、シティの多彩な攻撃にチーム組織は早々に崩壊し、後半開始直後の時点で4失点。ところが大量失点を喫したモイーズは、香川というカードを切ることはなく、ヤングに代えてボランチにクレバリーを投入。ルーニーを1トップに配し、トップ下にフェライニ、左MFにウェルベック、右MFにバレンシアという「4−2−3−1」への布陣変更で局面打開を試みた。

 モイーズが期待を寄せるフェライニは、90分を通じて屈強なフィジカルを披露し、攻守両面において異彩を放った。だが、シティのような素晴らしい戦術に対し、たったひとりの新加入選手で対抗できるほど、プレミアの舞台は甘くはない。ユナイテッドの攻撃は完全に封じられたまま、ダービーを終えた。

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