2013.09.15

レアルにとってベイルは、ピカソの絵のようなものだ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 フットボールは大きなビジネスではない。フィンランド人アナリストのマティアス・モットラは2011年、仮にレアルがフィンランドの企業だったら、その規模は全国で132位でしかないことを割り出した。しかしフットボールは、成長著しいグローバルなビジネスだ。インド人も中国人もアメリカ人も、レアルでプレイするガレス・ベイルを見たがるだろう。

 他のフットボールクラブのオーナーたちも、ほとんど金の心配はしていない。フォーブス誌の推定では、モナコのオーナーでロシア人大富豪のドミトリー・リポロフレフの資産は91億ドル(約9100億円)だ。フォーブスは、チェルシーのオーナーであるロマン・アブラモビッチの資産も102億ドル(約1兆200億円)と見積もっている。彼らは普通のファンが試合のチケットに60ユーロ(約8000円)を払うのと同じ感覚で、選手ひとりに60万ユーロ(約8000万円)を払うことができる。

 悲観的な見方をする人たちは、あきれてモノが言えないほどの金額を使いつづければ、ビッグクラブはいつか破綻するだろうと言う。しかしイングランドでプロのフットボールクラブが破綻した例は、1931年が最後だ。現在のヨーロッパの経済危機も、それほどの影響はもたらしていない。レアルの負債の正確な数字は、どの統計を使うかで違ってくるが、1億ユーロ(約132億円)ちょっとから5億ユーロ(約660億円)の間といったところだ。

 仮にレアルが破綻しても、レアルのブランドは生き残る。翌朝には誰かが「レアル・マドリード」というクラブを立ち上げ、その名前を白いシャツに入れる。やがてファンが列をつくる。イタリアのフィオレンティーナが2002年に破綻したときにも、まさに同じことが起こった。

 意外な話かもしれないが、ビッグクラブには途方もない持続力がある。何しろ破綻しても、すぐに復活するのだから。どんな組織にも、これ以上の持続力は期待できない。

 レアル・マドリードのペレス会長は、ACSという建設会社をスペインで経営している。同社は昨年、経済危機のなかでレアルの約75倍の収入を上げた。ペレスはビジネスを知っている。レアル・マドリードがやっているのはビジネスではない。それよりはるかに大きな何かだ。

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