マンUでチャンス激減の香川真司。自分を取り戻すための戦いが始まる (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

 さらに、移籍期限ぎりぎりになってモイーズ新監督の秘蔵っ子フェライニをエバートンから獲得したことも追い打ちをかける。ベルギー代表のフェライニは、長身とパフワルなフィジカルが特徴で、攻撃的MFから昨季主にプレイしたボランチまで、中盤ならどこでもできる選手である。モイーズ監督は「敵にしたくない選手。他の選手にはないものを持っている」(MUTV=マンUのオフィシャルテレビ)と高く評価している。まさに香川のライバルの獲得である。焦燥にかられるのも無理はない。

 とはいえ、この厳しい状況は予測できなかったものではなかった。モイーズ監督がエバートン時代に見せていたのは、ロングボールを主体にスピーディかつダイレクトにゴールを目指すサッカーだった。またフェライニを重用してきたことでも分かるように、大型選手を好む傾向にあることも明らか。香川やエルナンデスといったタイプは、モイーズのサッカーにはまらないかもしれない。そしてフェライニ獲得は、モイーズ就任決定時から確実視されていたことだった。

 また、香川はコンフェデ杯出場のため、チームへの合流は他に比べて1ヵ月程度遅れた。「彼が出遅れたことが最大の問題。でもこれからは使おうと思う」とモイーズは発言している。真意は図りかねるが、出遅れを重視していることは明白だ。

 この夏、望めば香川にはいくつかの選択肢はあった。8月下旬にはESPN電子版が「香川がアトレティコ・マドリードのオファーを断っていた」と報道した。また、ドルトムントのツォルク強化部長の「獲得の打診をしたが、マンチェスター・ユナイテッドと香川本人の両者から断られた」とのコメントも報じられた。特に古巣ドルトムントは、ヌリ・シャヒンをレアル・マドリードから買い戻した経験もあり、香川に関しても出戻りはウェルカムのはずだ。だが香川はそれを良しとしなかった。マンUでのプレイを望んだのは香川自身なのだ。

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