ドイツ3季目、酒井高徳が語ったチーム内競争と日本人の宿命 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by GettyImages

 そして迎えた監督交代後の第2戦。リーグ第4節のホッフェンハイム戦に、シュツットガルトは6-2と大勝した。「今日負けたらヤバいと思って気が張っていた」「ひっさびさに疲れました」と、酒井は胸中を打ち明けた。

 シュナイダー監督になり、サッカーのスタイルは一変した。これまではバランスを崩しても攻撃に人数をかけることが求められたが、今では何よりバランスが重視されると言う。サイドバックである酒井には、まず起点になることが求められるようになった。ホッフェンハイム戦でチーム最多のボールタッチを記録したことからも、まずはサイドバックにボールを回すスタイルであることがはっきりした。

「このチームはカウンターのチームだと思っていたんだけど、それを監督が指摘してくれた。今まではセンターバックが縦にボールを入れて、それに周りが反応するっていうのが一つのスタイルだった。ボランチもサイドバックもみんなが上がる事を求められた。でも今は、『センターバックが早くサイドバックに回して、そこからだ』と、口を酸っぱくして言われている」

 この日はそれが功を奏し、守備のバランスを崩す事はなかった。とはいえ、酒井の持ち味は攻撃参加でもある。大胆なオーバーラップから、ドリブル、クロスといったプレイが現地でも評価されてきた。だがホッフェンハイム戦では、アシストを記録したシーン以外は、最終ラインで堅実にプレイした。

「前に行きたい気持ちもあるけど行かなかった。前(の選手)が結果を出すならそれでいいのかなって思ってしまうし、求められるのはチャンスのときだけ行くことなのかも。だから、今日みたいなプレイをするのが一番良いのかな、と。チームが勝つことが一番いいから、今はこれで良いのかもしれません」

 新監督の戦術に合わせることに納得しつつも、少しジレンマも感じている。

「結局チームの戦術に合わせなきゃいけないのはオレら日本人なのかなって。ジンジさん(岡崎)も言ってたように、オレらが犠牲になるというか、気を遣ってプレイできるのはオレらなのかな、と思う」

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