脱税スキャンダルはメッシの評判を落とすことになるのか (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 メッシはこれまで、面白い言葉を何ひとつ口にしたことがない。カリスマ性に乏しい内気なタイプで、アルゼンチンの偉大な先達ディエゴ・マラドーナのように大胆な発言がメディアをにぎわせることもない。ガールフレンドと息子との私生活が世間の関心を引くわけでもない。メッシが注目を集めるのは、あくまでフットボール選手としてだ。

 メッシの目には、スタンドの上のほうにいる観客よりもピッチがよく見えている。小刻みにドリブルしながら、相手チームの誰よりも素早く方向転換ができる。小柄なこともあってボディバランスも素晴らしい。

 偉大なドリブラーにはパスを出すことへの思い入れが強い選手もいるが、メッシはあくまでゴールにこだわっている。昨年は69試合に出場して91ゴールをあげるという記録をつくった(信じがたい数字だ)。世界年間最優秀選手に4年連続で選ばれたのも彼だけだ。チャンピオンズリーグは2度制覇し、バルセロナではリーグタイトルを5度獲得している。

 フットボールの好きなアルゼンチン人の新ローマ法王フランシスコにメッシが謁見した際には、どちらが相手に対して、より強い畏敬の念を抱いているのかわからなかった。

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