ブラジルが3連覇。コンフェデ決勝の勝負を分けたふたつの「スーパープレイ」 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by Matsuoka Kenzaburo

 もちろん、倒れながら執念で蹴り込んだフレッジも称賛すべきだが、この先制点のシーンを振り返ると、この日マラカナン・スタジアムにいた勝利の女神がブラジルに微笑んでいたことがよく分かる。

 地元サポーターの大声援をバックにしたブラジルにとって、早い時間帯でリードしたことがその後のすべてを好転させたと言っても過言ではない。

 次は、前半41分のシーンだ。前半15分を過ぎたあたりから少しずつ自分たちのリズムを取り戻していたスペインは、カウンターから左FWのマタが右サイドでフリーの右FWペドロに抜群のパスを供給。受けたペドロのシュートはブラジルの守護神ジュリオ・セーザルを破り、ボールはゴール左隅のネットを揺らすはずだった。

 それを阻んだのは、必死にカバーに入っていたブラジルCBのダビド・ルイスだ。決死のスライディングでスペインの同点ゴールを阻んだそのプレイは、それこそ鳥肌もののシーンだった。

 そして、前半44分のブラジルの追加点は、ネイマールのゴールである。

 ネイマールにラストパスを送ったオスカーのアシストも抜群だったが、それ以上にペナルティーエリア内左から放たれたネイマールの左足シュートは、コンフェデレーションズカップの歴史に刻まれる、超がつくほどのスーパーゴールだった。

 せっかくつかんだペースを、ダビド・ルイスとネイマールのスーパープレイによって完全に狂わされてしまったスペイン。とりわけ、ネイマールの追加点が決まった瞬間のスペイン代表チームの意気消沈ぶりは、スタンドから見ていても手に取るように分かった。

 そういう意味でも、この試合は前半の45分間で勝敗が決したと言えるだろう。後半開始早々にフレッジが決めたブラジル3点目のゴールも、その後に起こったピケの退場劇も、もはや勝負の分かれ目にはなり得なかった。

「来年のワールドカップに向けてとても良い状況を作ることができた。今日スタジアムで声援を送ってくれたサポーター、そしてスタジアムの外で応援してくれた全国民に感謝したい。スタンドからは『チャンピオンが帰ってきた!』という声援を何度も聞けた。そういった彼らのサポートのおかげで、チームも団結することができた」

 試合後にこう語ったフェリペ監督は、やはり何か特別なものを持った名将だと痛感する。選手起用法、戦術、采配なども優れているとは思うが、それ以上に、チームに自信を与え、勝利に値する集団に仕上げていく術を知り尽くした指導者だ。

 実際、今大会前は不安要素ばかりがクローズアップされていたが、ブラジルは試合を重ねるごとに優勝に相応(ふさわ)しい"強いチーム"へと成長を遂げていった。それはまるで、フェリペ監督が率いた2002年のワールドカップ日韓大会で優勝したブラジル代表を彷彿させる。

 一方、敗れたスペインのショックは小さくない。

「明らかにこの敗戦は痛いものだが、今大会についてはポジティブに考えたい。試合の詳細について語るべきことはないが、ダビド・ルイスのクリアが同点と2-0の分かれ目となったことは間違いないだろう。我々はハイレベルなサッカーができるチームだし、素晴らしいクオリティの選手もいる。ただ、負けたということは何かを変える必要があるのだろう」

 試合後のデル・ボスケ監督は、相変わらず淡々とゲームを振り返った。

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