2014年W杯は無事ブラジルで開催できるのか? (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi 渡辺航滋●撮影 photo by Watanabe Kouji

 たとえば、来年ブラジルで開催されるワールドカップについても、政府はもともと国費を使わないと言っておきながら、最終的にはFIFAが指示する基準を満たすために公的資金を大量に投入。国民からすれば、「我々よりもFIFAの方が大事なのか」という反発心が生まれるのも当然のことだった。

 実際、今回のコンフェデレーションズカップを取材していて痛感するのは、急速な経済発展に伴う国全体の"活力"と、20年以上も変わっていない"貧困"というダブルスタンダードだ。

 まず経済成長に伴う活力は、街の至るところで目に付く。地方都市でも建築ラッシュが訪れているし、大都市サンパウロの中心には一流ブランドのショップが軒を連ねるストリート(オスカーフレイリー通り)があり、そこでは1台数千万円もするような高級外国車をたくさん目にすることができる。

 また、夜食事をすれば、飲み物と料理でひとりあたり4000~5000円はかかってしまうような高級レストランが賑わいを見せ、ビッグマックセットが1000円以上もするマクドナルドも家族客や若者で大混雑。

 そこからは、ブラジル経済の堅調ぶりと、人々の暮らしが改善されていることが容易に見て取れた。

 しかしその一方で、高層ビルが立ち並ぶ大都市サンパウロやリオデジャネイロの中心部にはホームレスが多く、街から少し離れると「ファベーラ」と呼ばれるスラム街が点在。そこには、多くの貧困層たちが相変わらず過酷な暮らしを強いられている姿があった。

 かなり改善されたと言われる治安についても、こういったエリアでは決して良いとは言えないのが実情だ。

 つまり、今回のデモは公共の交通機関の運賃値上げをきっかけにして、これまで溜まっていた大多数の国民の不満が一気に爆発した格好なのだ。

 だからこそ、当初デモを呼びかけた中間層エリートたちが終了宣言しているにもかかわらず、全国各地に広がった大規模デモは拡大の一途を辿ったのだろう。しかも、次第にデモの目的はそれぞれの主張にすり替わると、一部暴徒化した人たちが車や店を破壊。中には警察と衝突するなどして死者を出す事態にまでなっている。

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