2014年W杯は無事ブラジルで開催できるのか?

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi 渡辺航滋●撮影 photo by Watanabe Kouji

 今月15日に開幕したコンフェデレーションズカップも、いよいよ30日(現地時間)に予定されている3位決定戦と決勝戦を残すのみとなった。もちろん、地元ブラジル国民最大の関心は決勝戦のブラジル対スペイン戦の行方になるが、もうひとつ、無関心ではいられない重大な問題が残されたままとなっている。

 その問題とは、これまで政府が必死の対応策を打ち出しながら、なかなか収束しない大規模デモである。

 筆者も含め、日本人取材陣がこのデモの存在を初めて目にしたのは、首都ブラジリアで行なわれた開幕戦前日のことだった。試合会場エスタディオ・ナシオナル周辺にデモ隊が現れると、一部ではタイヤを燃やした黒煙が青い空を染め、ひと目見ただけでそれが単なるデモでないことは容易に察することができた。

ワールドカップは要らないと訴えるデモの参加者ワールドカップは要らないと訴えるデモの参加者 軍警察の機動隊に取り囲まれた彼らが手にしていたメッセージは、「ワールドカップは要らない」、「私たちは、医療や教育のお金を必要としている」といったものだった。

 さらに、開幕セレモニーの際、FIFA(国際サッカー連盟)のブラッター会長とルセフ大統領がオーロラビジョンに映し出されると、スタジアムを埋めたファンが一斉に大ブーイング。開会宣言をしようとするブラッター会長も、言葉を発するタイミングを失いかけたほどの激しいブーイングだった。

 さっそく現地の人にこのデモについて聞いてみると、今回のデモは経済発展を続けるブラジル社会が抱える根深い問題であることがわかった。

 事の発端は、今月6日、政府がバスなど公共の交通機関の運賃値上げを発表したことに抗議して、サンパウロで小規模デモが行なわれたことだった。デモを呼びかけたのは若手弁護士などを中心とした中間層エリートたちで、デモの本質的な部分は、わずか0.5レアル(約25円)のバス運賃の値上げ云々ではなく、汚職が多発する政界、そして一部の権力者だけに富が集中している不公平な社会に対する不満なのだという。

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