2013.05.28

CL決勝でドイツ勢が示したサッカーの新たなトレンド

  • 福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro
  • photo by Akagi Shinji

 アタッカーではバイエルンのリベリー、ロッベンにも注目していたが、ドルトムント守備陣はロッベンとリベリーの特長をつかんでいるので、ともになかなか思うようにプレイさせてもらえなかった。それでも、バイエルンは一瞬のチャンスを見逃さずゴールを決めた。

 得点シーンでは、2点ともこのふたりがかなり接近してプレイしていた。通常、両ワイドの選手があれだけ近い位置になることは珍しい。バイエルンの場合、左右どちらかのサイドか中央で、彼らが近い位置でプレイして周囲と連動し、そこからゴール前の狭いゾーンでチャンスメイクするシーンが何度かあった。実際、そうやって決定機をつくることができ、ゴールにつながった。

 とくに2点目(決勝点)については、リベリーの強さが発揮された。バイエルンの最終ラインから、ドルトムントDFライン裏へのロングボールをリベリーが収めて、ロッベンのゴールにつながったが、これは、ドルトムント守備陣がほんの一瞬集中を欠いたときだった。

 まさかバイエルンが自陣から長いボールを蹴ってくるとは思っていなかったのかもしれない。意表を突くロングボールだったと思う。

 選手が延長を意識し始めた後半終了間際(89分)に、いきなりラフにロングボールを蹴りこんで、不意を突いた形になったが、決して精度は高くなかったし、速いパスでもなかった。それをリベリーがうまくキープして、ロッベンにパスを出した。

 この試合、ロッベンは何度かあったGKとの1対1で決められず、昨季のようにまたブレーキになるのかと思われたが、それを振り払う見事な決勝ゴールだった。前回の決勝は88分にチェルシーに追いつかれ、延長でロッベンがPKを外し、PK戦で負けたバイエルンだったが、今回は89分に勝ち越すという劇的な展開だった。

 12年ぶり優勝のバイエルンは、これまで何度もCL決勝に進出していたがなかなか勝てずに「シルバーコレクター」と言われてきた。しかし、今回見事に優勝して、今シーズンはリーグも制覇。残るポカール(ドイツカップ/現地6月1日開催)決勝でも勝てば、3冠を達成する。この勢いがどこまで続くのか注目したい。

 一方、敗れたとはいえ、はつらつと自分たちのサッカーをしたドルトムントもすばらしかった。やるべきことはやったと思うし、勝負を分けたのは、ほんの少しの差で、とくに経験の差が出たのかなと思う。また、ドルトムントのサポーターも選手も監督も、「グッドルーザー」だった。それぞれお互いを称えて、爽やかな試合後だった。ロンドンまで観戦に来てよかったと思える、すばらしい試合だった。

 今回の決勝を現地で取材して、世界の最先端のフットボールの潮流を感じることができた。バイエルンもドルトムントも、強いフィジカル、守備でのハードワーク、縦に速い攻撃が特徴で、バルセロナとは一線を画する攻撃サッカーのスタイルといえる。

 伝統的なフィジカルと気持ちの強さや勤勉さだけでなく、戦術やテクニック、スピードでも高いレベルにあるドイツ勢がこのまま強さを見せ続け、頭ひとつ抜けだすのか。それとも、ネイマールを獲得したバルセロナが対抗馬として意地を見せるのか。あるいは新体制になるレアル・マドリードの復権、大型補強を続けるパリ・サンジェルマンの台頭や、香川真司が所属するマンチェスター・ユナイテッド、モウリーニョ復帰が濃厚なチェルシーなどプレミア勢の逆襲があるのか。来季も興味が尽きない。

 もちろん近い将来、香川真司ら、日本人選手がこの舞台に立つ日が来ることを楽しみにしたい。

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